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薬剤性ミオパチー[私の治療]

No.5021 (2020年07月18日発行) P.45

鈴木重明 (慶應義塾大学医学部神経内科准教授)

登録日: 2020-07-19

最終更新日: 2020-07-14

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  • 薬剤が原因となる筋障害は多岐にわたる。薬剤中止により筋症状が軽快する場合と,中止後も筋症状が遷延し,自己免疫機序によりステロイド治療が必要な場合がある。筋病理所見は,免疫介在性壊死性ミオパチーあるいは類似した所見を呈し,炎症性筋疾患(筋炎)の病型に含まれる。

    ▶診断のポイント

    薬剤開始後に筋力低下と血清クレアチンキナーゼ(CK)上昇が認められるのが特徴であり,原因薬剤の中止にもかかわらず筋症状が改善しない。病態に関連した自己抗体が存在する。

    ▶私の治療方針・処方の組み立て方

    炎症性筋疾患の原因となる代表的な薬剤は,スタチンと免疫チェックポイント阻害薬である。

    【スタチン誘発性ミオパチー】

    スタチン治療が原因となる筋有害事象には,検査異常を含めた筋に関するあらゆる症状(筋肉の痛み,つり,こわばり,違和感など)が含まれる。これらの症状は,体幹や近位優位の四肢に左右差なく,比較的大きな筋肉に出現する。重篤な病態は,横紋筋融解症と四肢・体幹の筋力低下(ミオパチー)である。スタチン誘発性ミオパチーは,原因薬剤の中止にもかかわらず,四肢・体幹の筋力低下が数カ月かけて進行していく。発症頻度はきわめて稀(スタチン使用例の0.01%未満)であり,製剤による発症頻度に差はない。特に高齢者で発症する場合が多い。筋病理では,免疫介在性壊死性ミオパチーの所見を呈する。患者血清中に3-hydroxy-3-methylglutaryl-coenzyme A reductase(HMGCR)に対する自己抗体が検出される。血清CK値の平均は5000IU/L程度と高値になる。抗HMGCR抗体は,スタチン内服中で筋有害事象のない患者や,血清CK値だけが上昇する患者では陰性となる。

    【免疫チェックポイント阻害薬による筋炎】

    革新的ながん治療薬である免疫チェックポイント阻害薬の副作用として,これまで経験しなかった関連有害事象(immune-related adverse events:irAE)が出現する。irAEとして発症する筋炎の頻度は,免疫チェックポイント阻害薬使用例の0.2%程度に認められ,使用頻度の高いニボルマブやペムブロリズマブによる報告例が多い。一般的な筋炎と同様に,体幹・四肢近位筋優位の筋力低下と筋痛が症状の中心で,血清CK高値(平均5000IU/L以上)が特徴的である。筋病理では,リンパ球浸潤が筋束内に集簇的に認められ,筋線維の壊死,再生変化が特徴的であることから,免疫介在性壊死性ミオパチーと類似点がある。眼瞼下垂や眼球運動障害など,眼症状を呈する点が特徴的で,重症筋無力症との鑑別や,両者が合併する可能性が指摘される。横紋筋に対する自己抗体(抗横紋筋抗体)が70%で陽性となる。

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