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【識者の眼】「敗血症診療ガイドライン─日本と世界の現状」小倉裕司

No.5023 (2020年08月01日発行) P.61

小倉裕司 (大阪大学医学部附属病院高度救命救急センター准教授)

登録日: 2020-07-13

最終更新日: 2020-07-13

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診療ガイドラインとは、“エビデンスのシステマティック・レビューと複数の治療選択肢の利益と害の評価に基づいて患者ケアを最適化するための推奨を含む文書”と定義される。国際的にも普及しているGRADE(Grades of Recommendation,Assessment,Development and Evaluation)システムでは、ガイドラインの推奨の決定は、①エビデンスの質、②利益と害のバランス、③患者の価値観や希望、④コストや資源(保険診療)の利用─の4要因によって行われる。医療水準や医療環境だけでなく、医療経済、保険制度、宗教、文化の違いなど様々な因子が推奨には反映され、世界標準をターゲットにした診療ガイドラインが各国で必ずしも使いやすいとは限らない。

敗血症は、「感染に対する調節不能な宿主反応により、重篤な臓器障害が引き起こされた状態」(sepsis-3)と定義され、あらゆる年齢層が罹患する頻度の高い重篤な疾患である。発症早期から迅速かつ適切な全身管理を要し、敗血症患者のケアを最適化することを目的とする診療ガイドラインの役割はきわめて大きい。国際的な敗血症診療ガイドラインとしては、Surviving Sepsis Campaign Guidelines(SSCG)が2004年から4年ごとに改訂を重ね、グローバルな診療の標準化に貢献してきた。特に、重要な急性期診療をバンドル(束)として提示した点は高く評価され、改訂ごとにバンドルも単純化・迅速化(診断1時間以内)している。

一方、日本版敗血症診療ガイドライン(J-SSCG)は、2012年から4年ごとに改訂され、わが国の医療レベル・保険制度・わが国ならではのトピックスなどを考慮しており、世界標準のSSCGとは一線を画する。J-SSCG2016では、SSCG2016にはない斬新な領域〔ICU-acquired weakness(ICU-AW)とPost-Intensive Care Syndrome(PICS)、DIC診断治療など〕を取り上げたが、現在改訂が進んでいるJ-SSCG2020では、新たに注目すべき4領域(Patient-and Family-Centerd Care、Sepsis Treatment Systemなど)を追加し、計22領域となった。臨床的に重要な116の臨床課題(CQ)をエビデンスの有無にかかわらず抽出し、多職種(看護師、理学療法士、臨床工学技士、薬剤師)および患者経験者を含む226名で改訂作業に当たる点でも注目される。また、新しい試みとしてCQごとに診療フローなど時間軸に沿った視覚的情報を取り入れ、アプリケーションとしても配信される。J-SSCG2020は、多職種が関わる国内外の敗血症診療の現場において、ベッドサイドで役立つガイドラインとして広く活用されることが期待されており、その公開が待たれる。

小倉裕司(大阪大学医学部附属病院高度救命救急センター准教授)[敗血症の最新トピックス⑥]

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