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【識者の眼】「医師会と医師会病」相原忠彦

No.5022 (2020年07月25日発行) P.63

相原忠彦 (愛媛県医師会常任理事)

登録日: 2020-07-10

最終更新日: 2020-07-10

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2020年6月27日、新型コロナウイルス新規感染者数が微増の東京都で日本医師会役員選挙が強行された。残念ながら座席の間隔は十分でなかった。日本医師会役員は代議員(医師会員500人に1人)による間接選挙で決まる。代議員数は372名、平均年齢は65歳を超えている。驚くことに欠席者はたった1名であった。この活力はどこから生まれるのか?

日本の医師数は約33万人、日本医師会会員数は約17万3000人で半分の医師しか日本医師会に入会していない。同じ自由業とされている医師と弁護士には大きな違いがある。強制加入の日本弁護士連合会と弁護士の関係とは異なり、医師は任意団体である医師会への入会は自由である。弁護士には「弁護士自治」が認められているが、医師には厚生労働省が監督官庁として存在している。組織的には日本医師会の下部組織としての47都道府県医師会、900以上の郡市区大学医師会がある。都道府県医師会は各都道府県行政との協調が地域医療に欠かせない。

地域医師会役員の仕事は医師と医師会活動の二足の草鞋であり、必然的に本業である医師として患者を診る時間に制限が生じる。この点が弁護士とは基本的に異なる。医師の診察行為は他の職種では代替不可だが、弁護士は仕事の多くをパラリーガルに任せる事が可能であり、自由業と呼ばれる開業医が最も不自由業である。その状況で奇貨も利権も無いにもかかわらず、医師会活動によって徐々に妙な義務感が高まり、自分がやらねばと思い込む「医師会病」に罹患する。特に病院経営者や2馬力(親子、夫婦)の場合は比較的簡単に「医師会病」となる。その頂点が日本医師会役員であると思い込むのはあながち間違いでは無いと思う。職能団体存続と市民の適正医療確保の二者のバランスを、行政と共に確立することが医師会の責務である。若い世代を引き込む「新たな医師会病」の模索が待たれる。医師会病は医師会役員を辞めるとほぼ治癒する。

相原忠彦(愛媛県医師会常任理事)[職能団体]

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