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巻き爪・陥入爪[私の治療]

No.5019 (2020年07月04日発行) P.40

齋藤昌孝 (慶應義塾大学医学部皮膚科専任講師)

登録日: 2020-07-03

最終更新日: 2020-07-01

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  • 巻き爪とは,爪の両側縁が内側に向かって過度に弯曲した状態を指し,陥入爪とは,爪の側縁の一部が皮膚に陥入(刺入)することによって損傷された皮膚が炎症をきたした状態を指す。いずれも足趾においてみられることが多く,特に母趾は陥入爪の好発部位である。巻き爪の原因として,慢性的な外力(靴による圧迫など)や加齢に伴う骨や関節の変形などが挙げられる。一方,陥入爪の原因として最も多いのは深爪であり,それによって爪の側縁に形成された爪棘が皮膚に鋭く刺さることが発症につながる。

    ▶診断のポイント

    【巻き爪】

    巻き爪には,爪の弯曲が近位側から遠位側にかけて徐々に増強するタイプが比較的多いが,爪の側縁が内側に急激に折れ曲がるタイプなど,様々な形状のものがみられる。なお,巻き爪の重症度と自覚症状の有無は必ずしも相関せず,爪の弯曲が著しい場合でも痛みなどの症状を欠くことも少なくない。

    【陥入爪】

    陥入爪では,爪の側縁(特に先端部分)が皮膚に隠れて見えなくなっていることが多く,そこを中心として皮膚の発赤や腫脹がみられ,さらに易出血性の肉芽形成を伴うこともある。最も圧痛の強い部分にしばしば爪棘が存在する。爪の弯曲度にかかわらず陥入は生じうるので,巻き爪に陥入爪を合併する場合もあるが,若年者に多い扁平かつ薄い爪が陥入爪になりやすい。

    ▶私の治療方針・処方の組み立て方

    【巻き爪】

    巻き爪で治療が必要となるのは,痛みなどの自覚症状がある場合や,巻いた爪の形状自体に悩みを抱えている場合である。巻き爪になると,変形した爪が靴などによって圧迫を受けやすくなったり,側爪郭と呼ばれる爪の両側にある皮膚(特に爪に接する部分)が胼胝様に硬くなったりして,痛みや違和感が生じるようになることがある。巻き爪の治療の主流は,爪の過度の弯曲を改善させることを目的とした矯正治療であり,現在は自由診療として広く行われている。また,胼胝様の過角化をきたした皮膚に対しては,角質溶解剥離作用のある尿素軟膏を外用するなどして症状緩和を図る。なお,陥入爪を合併している場合には,基本的には陥入爪の治療を優先させる。

    【陥入爪】

    陥入爪になると,運動時はもちろんのこと歩行時にも痛みを生じ,しばしば日常生活に支障をきたすことから,即効性のある治療が求められる。陥入爪の病態は比較的単純であり,爪の側縁が皮膚に陥入することによって炎症が引き起こされているに過ぎないことから,その陥入状態を解除することが最も合理的と考えられる。実際に,皮膚に陥入した爪を部分的に切除することで速やかに症状は改善する。さらに,必要に応じて抗炎症作用や抗菌作用のある外用薬を使用する。

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