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【識者の眼】「過剰な感染対策」倉原 優

No.5020 (2020年07月11日発行) P.59

倉原 優 (国立病院機構近畿中央呼吸器センター内科)

登録日: 2020-07-01

最終更新日: 2020-07-01

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SNSで情報を集めていると、学校、自治体、企業などでいろいろな感染対策がなされているようである。街を歩いていても、マスクを装着していない人は非国民じゃないかという目で見られるようで、日本人の“右に倣え”の国民性がここにきて病的になっている気がする。医療機関においては分からなくもないが、屋外にいる一般人にとって、マスクとはそこまで重要なものだろうか?

ある雀荘では、4人で麻雀を打つとき、2m以上距離を空けないといけないということで、雀卓から遠く離れて腰を曲げて打っていた。麻雀牌は4人で共有するというのに、飛沫のみを予防しても無意味である。ある小学校ではアクリル版で机の周囲を覆う一方で、生徒がプリントを手渡しで前から後ろに回している光景に唖然とした。しかも、放課後にいたっては子供同士が平然と遊んでいる状態だ。カラオケではマイクカバーをつけて歌っている。マイクカバーは歌うたびに交換するところもあるそうだが、取り外しの瞬間のほうがリスクは高いのだから、一体彼らが何を守りたいのかよく分からない。

私見だが、少なくとも外を歩いている時にはマスクは不要だと思う。しかし、街中ではほぼ100%の人がマスクを着けて歩いている。感染症の専門家の監修が入っていないためか、エビデンスのない頓珍漢な感染予防策が進んでいて、この国はいったい今後どうなってしまうのだろうと不安さえ感じる。

そして、これがいつかまた差別を生まないか、心配だ。既に、マスクを着けていない人は入店お断りという対応をしている店も出てきた。

倉原 優(国立病院機構近畿中央呼吸器センター内科)[医療SNS]

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