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膀胱損傷・尿道損傷・陰茎損傷[私の治療]

No.5018 (2020年06月27日発行) P.45

中島洋介 (川崎市立井田病院院長)

登録日: 2020-06-29

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  • いずれの損傷も交通事故や労働災害による外因性の損傷と,外科手術や処置で発生しうる医原性損傷に分類できる。

    膀胱損傷は挫傷と破裂にわけられるが,原因は交通事故による鈍的外傷が最多である。膀胱破裂が重要で,尿が腹腔内に漏れる腹膜内破裂(30%),膀胱周囲の後腹膜腔に漏れる腹膜外破裂(60%),両方の腹膜内外破裂に分類され,発生機序としては急激な腹圧上昇(腹膜内破裂)や骨盤骨折(腹膜外破裂)が関連する。飲酒により膀胱が尿で充満したときに,腹圧が上昇して発生する腹膜内破裂が有名で,通常は組織が脆弱な膀胱頂部に起こる。

    尿道損傷の原因は,交通事故や転倒転落などの鈍的外傷であり,ほとんど男性に発生する。損傷部位により,外括約筋部より近位の後部尿道損傷と,遠位の前部尿道損傷に分類され,損傷程度により尿道不完全断裂と完全断裂にわける。後部尿道損傷の原因はほとんどが骨盤骨折である。前部尿道損傷の主な原因は騎乗型損傷(straddle injury)であり,交通事故では単車や自転車のタンクやサドルにより,転倒転落では棒状の構造物により,股間を打撲して損傷する。後部尿道損傷は完全断裂が多く,治療に難渋する重症例が多い。

    陰茎損傷としては,勃起状態にある陰茎に鈍的外力が加わり陰茎海綿体白膜が断裂して陰茎に変形,屈曲,腫脹をきたす陰茎折症が重要である。原因は勃起時の自慰行為や性行為などが90%以上を占める。

    ▶診断のポイント

    膀胱破裂の自覚症状では無尿,肉眼的血尿,腹痛など。腹膜内破裂では,尿による腹膜炎から腹膜刺激症状が強い。画像診断は,造影剤を膀胱内に逆行性に充満させて撮影する膀胱造影またはCT膀胱造影が重要である。造影のポイントは,尿道留置カテーテルを挿入して2倍稀釈の造影剤を多め(300~400mL)に注入し,造影剤排出後の像も必ず撮影する。骨盤骨折で肉眼的血尿を認める患者は,循環動態が安定していれば逆行性の膀胱造影またはCT膀胱造影を施行すべきである。

    外尿道口の血液の付着は,尿道損傷を疑う身体所見である。陰嚢内血腫や会陰部の蝶形皮下出血斑は,前部尿道損傷に特徴的な所見である。画像診断は逆行性尿道造影で行う。外尿道口よりネラトンカテーテルを数cm挿入して2倍稀釈の造影剤を注入し,通常は左前斜位で撮影,造影剤の漏出像から損傷部位と損傷程度を診断する。

    陰茎折症は受傷時の問診と特徴ある外観から診断できる。性的なエピソード(騎乗位による性行為が多い)と受傷時に聞こえるポキッというcrack音の有無を確認し,陰茎が損傷した側と反対に屈曲変形腫脹している外観が特徴的である。画像診断は,白膜断裂部を超音波断層法あるいはMRIで同定する。外尿道口の血液付着など,尿道損傷合併を疑えば逆行性尿道造影も施行する。

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