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バレット食道[私の治療]

No.5016 (2020年06月13日発行) P.45

三輪洋人 (兵庫医科大学副学長)

山崎尊久 (兵庫医科大学内科学消化管科)

登録日: 2020-06-16

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  • バレット食道(Barrett's esophagus)の定義は,バレット粘膜(胃から連続性に食道に伸びる円柱上皮で,腸上皮化生の有無は問わない)の存在する食道とされている。成因としては,胃酸や胆汁酸などの食道内逆流や食道クリアランスの低下が考えられている。バレット食道は発がんの母地となる可能性がある。バレット食道腺癌は,わが国では約8%と食道扁平上皮癌に比べて頻度は低いが,近年増加傾向にあり,10年間で約2倍に増加していると報告されている1)

    ▶診断のポイント

    食道胃接合部(esophago-gastric junction:EGJ)の診断と生検の有無により,バレット食道の定義は世界的には統一されていない。わが国ではEGJを柵状血管下端と定義し,柵状血管が判定できない場合は胃の縦走ひだの口側上端を用いている。バレット粘膜が3cm以上のlong segment Barrett’s esophagus(LSBE)と,3cm未満のshort segment Barrett’s esophagus(SSBE)に分類されている。欧米ではLSBEが主体であるが,わが国ではLSBEは稀であり,SSBEが一般的である。また,欧米(英国を除く)では,生検により特殊円柱上皮(specialized intestinal metaplasia:SIM)の存在が必須とされているが,わが国ではバレット食道腺癌の発生に必ずしもSIMは必要でないと考えられ,腸上皮化生の有無は問わないと定義されている2)。わが国におけるバレット食道の頻度はLSBEで約0.5%,SSBEでは1~3cmが約1.0%,1cm未満のultra-SSBEが30~50%と報告されている3)

    内視鏡検査によるバレット食道腺癌診断では,深吸気時に送気によりEGJを十分伸展させることが重要である。また,SSBEでは食道壁の前壁から右壁,LSBEでは下壁から左壁に発赤・隆起・陥凹性病変としてみられることが多いと報告されており,部位の特異性を考慮した内視鏡診断が重要である。

    ▶私の治療方針・処方の組み立て方

    バレット粘膜の組織変化自体による症状は認めないが,胃酸や胆汁酸逆流と関連して発症するため,胸焼け,呑酸,嚥下困難などの胃食道逆流症状の治療を中心に進めていき,長期的には発がんリスクの抑制を目的としていく。特に,LSBEからの腺癌の年間発生率は約1.2%とされており,注意が必要である4)。しかし,SSBEからLSBEへ徐々に進展していく症例は少なく,SSBEからLSBEへ進展する症例は比較的短期間で進展していく可能性が考えられている5)。また,LSBEでは食道内酸クリアランスも低下しているとの報告もある6)。以上より,SSBEとLSBEの病態が異なっていることを認識しておくことが治療方針の決定には重要である。バレット食道のリスク因子として,高齢,男性,喫煙,逆流性食道炎,Helicobacter pylori(H. pylori)非感染,肥満などが挙げられ,食事指導や生活指導も重要である。

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