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【識者の眼】「西遊記にみるネクストコロナ—医療提供体制の再構築を」神野正博

No.5016 (2020年06月13日発行) P.55

神野正博 (社会医療法人財団董仙会恵寿総合病院理事長)

登録日: 2020-05-26

最終更新日: 2020-05-26

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長く続いた緊急事態宣言も全国で全面解除された。だからと言って世界に広がる新型コロナウイルスによるパンデミックを克服したわけではない。全国民、特に我々医療従事者、介護従事者は警戒態勢を緩めるわけにはいかない。

厭戦気分の下、「出口戦略」や「経済との両立」という言葉でアフターコロナが語られる。しかし、すでに我々は、アフターはなくウィズコロナであることを覚悟している。加えて、ネクストコロナに対応しなければならないのだ。

唐の時代に中国からインドへ渡り仏教の経典を持ち帰った玄奘三蔵の長年の旅をもとに書かれた西遊記は、三蔵法師と如意棒や筋斗雲ほかの術を駆使する孫悟空らによる今なお人気の冒険紀行だ。長安(西安)を出発し、新疆ウイグル地区、タクラマカン砂漠、天山山脈、タシケント、サマルカンドから天竺といわれたガンダーラへの行程だ。その間に、行く手を阻む数多くの恐ろしい物の怪、妖怪たちを駆逐しながら前に進む。

この行程、最近よく聞く中国の国家戦略である一帯一路構想における「陸のシルクロード」の行程だ。砂漠に険しい山脈など、今なお人を拒む辺境の地に、高規格道路や高速鉄道が敷設されていく。この辺境の地に、これまで物の怪や妖怪と恐れられて来た未知なる生命体として細菌やウイルスが隠れていないわけがない。

物の怪や妖怪は、一帯一路やグローバル物流に乗って、人口密集地、そして全世界へ広がっていく。そして、人類はその度ごとに犠牲を払いながら、如意棒や筋斗雲よろしくPCR検査やワクチン、新しい薬を駆使して戦い続けなければならない。

我々には、今回のコロナウイルス禍が何十年に1回のものではなく、今後絶えず戦い続けていくものであるという認識が必要だ。ネクストコロナの時代に備える「新しい生活様式」を常態化し、医療提供体制を構築し直す時期に来ているに違いない。

神野正博(社会医療法人財団董仙会恵寿総合病院理事長)[新型コロナウイルス感染症 ]

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