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新生児の精巣捻転

No.5007 (2020年04月11日発行) P.50

村上雅一 (鹿児島大学小児外科)

家入里志 (鹿児島大学小児外科教授)

登録日: 2020-04-11

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【両側精巣の喪失予防のため,緊急手術にて対側検索・固定が必要】

新生児精巣捻転(以下,本症)は10万出生に6.1人発症と比較的稀な疾患である。発症は胎生期が多く,早期診断により緊急手術を施行した場合でも精巣の救済率は5%ときわめて低い。そのため,新生児期の全身麻酔のリスクや手術侵襲を考慮して経過観察を支持する意見もあり,これまで緊急手術の適応や対側精巣固定の是非を含め,標準化された治療戦略が存在しなかった。

しかし2018年に発表された本症196例のメタアナリシス1)で,両側発症例が7.1%あり,そのうち64.3%は異時発症であったと報告されている。さらに,両側発症例はすべて術中対側検索によって対側の捻転が指摘されており,対側精巣固定により78.6%で対側精巣を温存できたとしている。また,両側新生児精巣捻転6例の報告2)では,3例は術前に対側の異常所見を認めず,カラードップラー法を用いたエコー検査でも正常の血流を確認したとされている。

このように,本症の一部は両側発症で異時性に対側が生後発症すると考えられ,両側発症例の見逃しは両側精巣ならびに妊孕性の喪失につながる。新生児の陰囊腫大・腫瘤では本症を疑い,対側に所見がない場合でも両側精巣捻転を念頭に置き,緊急手術による対側検索と固定を行うことが両側精巣の喪失予防に重要であると考える。

【文献】

1) Monteilh C, et al:J Pediatr Surg. 2019;54(4): 815-9.

2) Roth CC, et al:J Urol. 2011;185(6 Suppl):2464- 8.

【解説】

村上雅一,家入里志 鹿児島大学小児外科 *教授

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