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【識者の眼】「超高齢の母が骨折して見えた課題」佐藤敏信

No.5007 (2020年04月11日発行) P.66

佐藤敏信 (久留米大学特命教授、元厚生労働省健康局長)

登録日: 2020-04-13

最終更新日: 2020-04-07

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母は、私が退官する少し前、もう少し正確には父が死んだ翌年の2009年、80歳になった頃から、しばしば骨折するようになった。最初は右の脛骨上面の挫滅であった。2階建ての家で、ちょうど1階部分のフローリングの貼り替えと併せてホームエレベーターの設置工事をすることになっていた。母はこういう工事に興味があるので、2階の和室からしばしば1階を見に行ったらしい。その時に勢いよく何度も上り下りをしていて、こういうことになったようだった。

近くの整形外科の有床診療所に入院し、関節鏡下で、損傷した半月板の除去手術を受けた。手術は成功し、退院する頃にはエレベーターが完成したので、早速これを利用することとなった。並行して家の中のバリアフリー化を進めた。廊下、階段、部屋の入口を中心に手すりを設置した。また、風呂の洗い場はカラリ床でかさ上げをして、段差をなくした。母の家は主たる生活の場が2階なので、2階の寝室の隣にトイレを増築した。この時点では、お恥ずかしいことに介護保険制度を利用した住宅改修に思いが及ばず、全て自費で工事をした。

ホームエレベーターは300万円弱、トイレの増築に200万円弱、その他で300万円強。もろもろ入れると、結局この時点で1000万円近くの出費だった。母の家は築後40年を経過していたが、コンクリートパネルでできた家で、しかも1階から2階への吹き抜けがあった。したがって、増改築に当たっても躯体には何らの影響もなく、さらにその吹き抜け部分を利用することで、エレベーターはまるで最初からそこにあったかのように設置できた。

今回のまとめ。①超高齢者においては、常に整形外科的疾患発症の可能性を考えておくことが重要、②在宅で暮らすためにはバリアフリー化が不可欠、③そもそもの住宅の構造がしっかりしていないとバリアフリー化も困難、④仮に構造がしっかりしていても介護保険を利用しなければ、費用は莫大なものとなる。

設置したエレベーター

佐藤敏信(久留米大学特命教授、元厚生労働省健康局長)[介護保険制度②]

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