救急外来における薬剤耐性菌対策の注意点についてご教示下さい。
日本医科大学・根井貴仁先生にご回答をお願いします。
【質問者】
冲中敬二 国立がん研究センター東病院総合内科/国立がん研究センター中央病院 造血幹細胞移植科(併任)
【基本的な標準予防策はなんら変わりなく,必要に応じて接触予防策の実施を】
外国人観光者や労働者の増加,また邦人の世界各地への旅行者の増加に伴い,もともと国内で自然に分離培養されることがなかった薬剤耐性菌の分離が増えつつあります。実際に,救急外来などをスルーして医療施設の中に知らないうちに忍び込んだ薬剤耐性菌が,気付いた頃には院内の至るところの患者から分離される,いわゆるアウトブレイクもここ数年の間にいくつかみられました。
ことに救急外来は様々な疾患・外傷患者が昼夜を問わず出入りし,その中には外国人やつい最近まで海外にいた邦人が含まれることは稀ではありません。軽症から重症まであらゆる状態の患者の対応を行いますが,薬剤耐性菌までの対応を細かく行っている施設は,本年の東京オリンピックを見据えて増えてきているかもしれませんが,いまだ十分とは言えない現状と思われます。
救急外来における薬剤耐性菌対策の基本は,一般的な対策と何ら変わることはなく,また新しい何かを取り入れることでもありません。すなわち「標準予防策の徹底」の一言に尽きます。その標準予防策は,救急外来の患者が何を持っているかわからないことから,いっそうの徹底が求められるだけです。標準予防策というと手指衛生や個人防護具(personal protective equipment:PPE)の着脱だけ,と思っている医療従事者が非常に多いのですが,それだけではなく,アイマスクの着用や,安全機材を十分に利用した上での鋭利機材の使用,また必要に応じた柔軟な接触予防策が大きく求められます。
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