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【識者の眼】「新型コロナウイルス感染症:オンライン医療相談・オンライン診療を地域住民に提供すべきだ」黒木春郎

No.5002 (2020年03月07日発行) P.62

黒木春郎 (外房こどもクリニック理事長、日本遠隔医療学会オンライン診療分科会会長)

登録日: 2020-02-27

最終更新日: 2020-02-27

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新型コロナウイルス問題で医療現場は大混乱だ。規模の大きな病院等では疑い例の受け入れ態勢の構築が、私どものような地域の診療施設は住民の不安解消と健康保持のための具体的提案が迫られている。

地域での問題を2点に整理する。一つは、「コロナ感染かも」という不安を抱えた患者さんに対するケアとフォローである。もう一つは、慢性疾患等で診察や処方を必要としている人たちが感染を避けるために通院自粛している事態である。

私はこの両方の課題ともに、オンライン医療相談ないしオンライン診療が役に立ち得ると考える。

私の診療所がある千葉県いすみ市では、市長の英断により2020年2月27日から、新型コロナに関するオンライン医療相談費用に対して市による全額助成がスタートする。市内2カ所の医療機関が相談を担当する。心配のある人は医療機関のオンライン診療システムにアクセスして予約を取り、医師とテレビ画面を通してやり取りをする。医師からは患者個人へ医学的なアドバイスを行う。

もう一つの、通院自粛に関しては、保険診療の規定にある「電話等再診」を利用して処方箋を出すことができる。電話等再診の「等」とは、テレビ電話を含むと解される。感染リスクが高い(と懸念される)診療所の待合室で時間を過ごすこともなく、自宅でオンライン診療を受け、処方を受けることができる。これについては2020年2月25日に発表された政府の「新型コロナウイルス感染症対策の基本方針」の8ページに、「風邪症状がない高齢者や基礎疾患を有する者等に対する継続的な医療・投薬等については、感染防止の観点から、電話による診療等により処方箋を発行するなど、極力、医療機関を受診しなくてもよい体制をあらかじめ構築する」と記載されている。これまで疾患別に制限を受けていたオンライン診療の、緊急時における実質的な制限撤廃である。

基礎自治体独自の方策と、国の通達に則った積極的な解決策を、ぜひ、地域医療の現場から実効性のあるものにしていきたいと切望する。(2020年2月26日記)

黒木春郎(外房こどもクリニック理事長、日本遠隔医療学会オンライン診療分科会会長)[新型コロナウイルス感染症]

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