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【識者の眼】「緊急避妊薬の処方で予想外の妊娠を予防しよう」柴田綾子

No.5000 (2020年02月22日発行) P.53

柴田綾子 (淀川キリスト教病院産婦人科副医長)

登録日: 2020-02-20

最終更新日: 2020-02-19

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緊急避妊薬の処方は、産婦人科医でなくても医師免許があれば処方でき、予想外の妊娠を予防できます。昨年3月に国内初の緊急避妊薬のジェネリック薬が発売され、より多くの女性が手に入れやすくなりました。あまり知られていませんが、日本では1年間に14万人が人工妊娠中絶術を受けており、性教育を含めた「望まない妊娠の予防」は早急の課題です。昨年11月に厚生労働省は「緊急避妊薬を処方できる医療施設の一覧」を作成すべく全国に整備依頼を出しました。海外では処方箋が不要で薬局やオンラインで緊急避妊薬を自由に購入できる国もあり、東京オリンピック・パラリンピックでは海外の旅行者を含めて処方需要が高まる可能性があります。今回は、緊急避妊薬の処方の仕方についてご紹介します。

1.処方前に必要な問診3点

①最終月経の時期と持続日数、②性行為の日と避妊法(前回と前々回)、③アレルギーの有無。

最終月経が1カ月以上前の場合、妊娠している可能性もあるため妊娠検査を提案します(妊娠検査は医療機関では自費で約2000円、薬局では1回600円前後で購入可能)。日本の緊急避妊薬(ノルレボ/F:どちらもレボノルゲストレル1.5mgを1回1錠内服)は性行為から72時間以内の妊娠を予防する効果があるとされており、最終性行為の日時は重要です(海外では120時間効果がある薬もあります)。この薬は排卵を抑制(遅延)させることで妊娠を予防するため、排卵後の場合は失敗率が高くなります。緊急避妊薬の禁忌は①緊急避妊薬へのアレルギー、②重篤な肝障害、③妊婦─です。こちらも問診で確認すればよく、かならず妊娠検査や採血が必要というわけではありません。

2.内診は不要

緊急避妊薬の処方に内診や超音波検査は不要です。自費診療のため値段は施設ごとに設定します。薬は早く飲むほど妊娠予防の効果が高いため「できる限り早く内服する」ように説明します。妊娠予防率は約85%であり、100%予防できるわけではありません。「月経が予定より1週間以上遅れる」「薬を飲んでから21日経っても生理が来ない」場合は、妊娠検査をするよう説明してください。

3.副作用の情報提供を忘れずに

レボノルゲストレルは黄体ホルモンで、副作用として次の月経周期の乱れ(46%)、不正出血(14%)、嘔気(9.2%)等が起こることがありますが、命にかかわることはありませんので経過観察するよう説明します。内服後2時間以内に嘔吐した場合は、薬の吸収が不十分なため再度内服が必要です。

4.こんなときは産婦人科へ紹介を

①すでに妊娠していた、②最終性行為から72時間以上経過している、③性暴力被害の可能性がある─場合は、産婦人科を受診するようご案内ください。緊急避妊薬を内服して、もし妊娠しても胎児の奇形率は上昇せず、妊娠を継続して問題ありません。日本産科婦人科学会では「緊急避妊法の適正使用に関する指針」(http://www.jsog.or.jp/activity/pdf/kinkyuhinin_shishin_H28.pdf)で処方や指導方法について詳しく解説しています。ぜひご参照ください。

柴田綾子(淀川キリスト教病院産婦人科副医長)[産婦人科][緊急避妊薬]

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