WHOの国際がん研究機関IARC(International Agency for Research on Cancer)は1994年、3つの疫学研究からHelicobacter pylori(H. pylori)が胃がんの確実な発がん因子であると規定した。2014年には、非噴門部胃がんの89%がH. pyloriによるもので、除菌治療により30〜40%の予防効果が認められるため、胃がん対策としてH. pylori検査と陽性者に対する除菌治療、test&treatを行うことを検討するよう勧告した1)。日本における検討では、胃がんのうちH. pyloriが関連しないものは1%以下であることが明らかにされた2-3)。すなわち、日本の胃がんの99%以上はH. pyloriが関連した胃がんである。
H. pyloriは人の胃にのみ感染する細菌で、多くは5歳までの幼少期に主に家族内感染、特に母子感染として感染する。除菌治療をしない限り、多くは無症状のまま胃炎が進行し胃がんリスクが高まると共に、消化性潰瘍やポリープなど様々な胃疾患の原因になる。
H. pyloriを除菌することは胃がん予防に加えて消化性潰瘍など様々な胃疾患の予防になると共に、H. pyloriの感染源の治療となる。また、H. pyloriは幼少期以外に新規感染することは極めて稀で、一度除菌に成功すると再感染の危険はほとんどない。そのため対策としてはワクチンではなく、感染者に対する除菌治療を行う。
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