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甲状腺悪性腫瘍[私の治療]

No.4997 (2020年02月01日発行) P.44

村上 司 (野口病院院長)

登録日: 2020-02-02

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  • 甲状腺原発の悪性腫瘍には,乳頭癌,濾胞癌,髄様癌,低分化癌,未分化癌,甲状腺原発リンパ腫が含まれる。生物学的特徴や予後が各組織型によってまったく異なるので,甲状腺の結節を悪性と診断するときには組織型まで診断する必要がある。わが国では甲状腺悪性腫瘍の約90%を乳頭癌が占める。また,これらの中で乳頭癌が最も予後の良い腫瘍である。

    ▶診断のポイント

    視診,触診で甲状腺に結節を確認し,頸部のリンパ節腫大の有無を確認する。次に超音波検査で結節の性状と腫大リンパ節の有無を観察する。超音波像で悪性を示唆する所見として,不整な形状,不明瞭粗雑な境界,不均質で低い内部エコーレベルが主な所見である。甲状腺被膜に浸潤する所見や,転移を疑う腫大リンパ節の存在も,もちろん悪性を示唆する所見である。また,境界部低エコー帯の性状,微細点状高エコーの有無や結節の縦径と横径との比率も参考にすべき所見である。超音波所見から悪性が疑われる場合は,腫瘍径も勘案して穿刺吸引細胞診を行う。

    乳頭癌は超音波検査で上記の悪性所見を示し,容易に診断できることが多い。細胞診でも特徴的な核所見によって診断できることがほとんどである。乳頭癌と診断した場合には,所属リンパ節と肺への転移の有無を確認する。

    濾胞癌は乳頭癌についで頻度の高いものであるが,超音波検査と細胞診では濾胞腺腫との鑑別が困難であることがしばしばある。

    髄様癌は超音波所見,細胞診所見から疑えることがある。カルシトニンの血中濃度が高いことが特徴である。一部の例ではがん胎児性抗原(carcinoembryonic antigen:CEA)も高値を示す。また,髄様癌には散発性のものと家族性のものとがある。後者は多発性内分泌腫瘍症2型(multiple endocrine neoplasia type 2:MEN2)の部分症で,副腎褐色細胞腫や副甲状腺の過形成を随伴することがある。髄様癌を診断した際には家族歴の有無を確認し,RET遺伝子の遺伝学的検査を行う。

    未分化癌は高齢者に発生し急速に増大するきわめて予後不良の腫瘍である。通常は急速に増大する前頸部腫瘍を主訴に受診する。初診時に既に反回神経麻痺や肺転移を伴う例もある。経過と理学所見から未分化癌を疑い,core needle生検または細胞診で診断する。CTやMRIなどで病変の範囲と遠隔転移とを検索する。低分化癌はこの未分化癌と分化癌(乳頭癌と濾胞癌)との中間の態度をとる腫瘍である。大きな腫瘍であることが多い。

    甲状腺原発リンパ腫は,橋本病を母地として発生する腫瘍で高齢者に頻度が高い。超音波検査で限局性またはびまん性に広がる境界明瞭な低エコー域として描出される。内部エコーの性状や病変の形状に特徴があり,後方エコーの増強も特徴的な所見である。超音波所見でリンパ腫を疑うことは比較的容易だが,穿刺吸引細胞診での診断は困難なことが多い。外科的生検で診断しフルオロデオキシグルコース-ポジトロン断層法(fluorodeoxyglucose-positron emission tomography:FDG-PET)/CTで病期診断を行う。甲状腺に発生するリンパ腫のほとんどは粘膜関連リンパ組織(mucosa associated lymphoid tissue:MALT)リンパ腫かびまん性大細胞型B細胞リンパ腫のいずれかである。

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