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低ナトリウム血症[私の治療]

No.4997 (2020年02月01日発行) P.40

熊谷天哲 (伊丹ガーデンズクリニック)

内田俊也 (帝京平成大学ヒューマンケア学部柔道整復学科教授)

登録日: 2020-01-31

最終更新日: 2020-01-29

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  • 低ナトリウム(Na)血症は最もよく認められる電解質異常のひとつである。慢性的な軽度の低Na血症では明らかな症状がなくとも,軽度の認知障害や歩行障害,さらには骨粗鬆症から転倒・骨折しやすく,その治療の重要性が示唆されている1)

    ▶診断のポイント

    低Na血症の鑑別診断は高血糖,高中性脂肪血症,パラプロテイン血症,マンニトール,グリセオール®(濃グリセリン)投与に伴う偽性低Na血症を除外した後,体液量の評価,ホルモン検査などが必要であり,すぐにはできないことが多い。症候性の高度な低Na血症では鑑別診断より治療を優先する。

    ▶私の治療方針・処方の組み立て方

    低Na血症の治療法は,生理食塩水,高張食塩水,水分制限,ループ利尿薬,抗利尿ホルモン(antidiuretic hormone:ADH)阻害薬,尿素などがある。症状の有無,急性か慢性かの経過の違いにより,血清Naの補正速度を調整することが重要である。

    ①症状の有無:症候性の低Na血症は脳細胞への障害が考えられ,早急な治療が必要である。

    ②慢性vs. 急性の経過:急性の低Na血症では脳細胞の浸透圧に対する防御機構がまだ十分に働いていないため,補正速度を速くする必要がある。一方,慢性の低Na血症では脳細胞が防御機構を働かせて,浸透圧物質を細胞外に放出して,細胞内液の張度を低くするため,急激に血清Na濃度を上げすぎると,脳細胞内の水が細胞外に移動して,致命的な細胞萎縮を起こす可能性がある。橋の中心部分で起こることが多く,橋中心脱髄症候群(central pontine myelinolysis:CPM)と呼ばれる。

    ③低Na血症の進行の有無:尿Na濃度(尿[Na])と尿カリウム(K)濃度(尿[K])を測定し,その和を血清Na濃度(血清[Na])と比較することで,低Na血症が進行するかどうか予想できる。

    尿[Na]+[K]>血清[Na]⇒低Na血症は進行する
    尿[Na]+[K]<血清[Na]⇒低Na血症は改善傾向

    自然経過で低Na血症が進行する場合には,より積極的な治療が必要となる。

    ④CPMを起こしやすい症例:アルコール多飲,低栄養,低K血症,サイアザイド服用,重症熱傷はCPMを起こしやすいため,注意が必要である。
    以上①~④の4つの因子を考慮して補正速度を検討する。

    輸液による低Na血症の改善の程度を予測する式がある。輸液1L投与後の血清Na変化は以下の式で示される。

    total body water(TBW)は通常,体重×0.6で算出される。

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