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今、求められるダイバーシティの推進[炉辺閑話]

No.4993 (2020年01月04日発行) P.7

矢﨑義雄 (東京医科大学理事長)

登録日: 2020-01-01

最終更新日: 2019-12-26

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ダイバーシティ(多様性)の推進とは、属性の差異による差別をなくし、機会均等、公平、平等をめざす文化が醸成された社会を構築することを言う。属性として年齢、性別、国籍、信仰、障害の有り無し、などがある。

今日、このダイバーシティの推進が世界的に注目されている。それは、技術革新と情報化、そしてグローバル化により社会が多様化しており、多様な人材をどう活かすかが大きな課題となったからである。特に、わが国においては、これに加えて人口の少子高齢化による経済の停滞があり、高齢社会を活性化するために、さらなるダイバーシティの推進が求められている。

このようなダイバーシティ(多様な社会)の考え方をもとに,ダイバーシティマネジメントとして、経済産業省は「多様な人材を活かし、その能力を最大限発揮できる機会を提供することで、イノベーションを生み出し、価値創造につなげる経営」と定義している。特に、女性や高齢者の活躍が期待されている。

このような状況の下で、わが国でこのダイバーシティの推進が今、最も求められているのが、救急医療や専門医療を担っている医療機関である。一昨年に本校をはじめ私立医科大学で、入試における女性への差別が明らかとなり、社会的に大きな批判を浴びたところである。その要因のひとつとして、このような医療機関においては医師の拘束時間が厳しく、女性が産休や育児のための長期休暇が取りにくい労働環境が指摘されており、その改善が社会的にも喫緊の課題になっている。それには医師の働き方改革を推進するとともに、欧米で進められているような、病院医師の業務を、看護師を中心とした医療職に委託する医療提供体制を構築する必要がある。そのためには、医療職の医学的知識と技能の格段の向上が必須であり、その基盤となる専門教育が十分に整備されることによる医療安全の確保が、国民の理解を得る上で欠かせない。

この度、ダイバーシティを率先して推進すべき本学が、これを否定するような問題行為を入試において行ったことに対して、社会的そして道義的責任を重く感じ、深く反省するとともに、ダイバーシティを推進するモデル校となるべく改革に邁進したい。

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