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ONE TEAM[炉辺閑話]

No.4993 (2020年01月04日発行) P.70

遠井敬大 (東京医科大学病院総合診療科)

登録日: 2020-01-05

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この原稿を書いている前日に、ラグビーW杯の日本対南アフリカの試合が行われた。残念ながら日本代表は敗れたが、その戦いは多方面で称賛されている。

今回のラグビーW杯では日本チームの躍進以外にも注目されたことが多数ある。試合後に敵味方関係なくその健闘を称え合うノーサイドの精神、日本チームの強い結束を示した「ONE TEAM」の精神など、実社会の現場でも通用することを改めて気づかせてくれた。また、日本の観客の行動も注目された。海外チームの国歌を事前に覚え一緒に歌う、今や他のスポーツででも恒例となった試合後のスタジアムの自主的な清掃など、今回のW杯が称賛されるのは代表チームの強さ以外にもあるのではないだろうか。これらの出来事に共通することは何だろうか?それは古き良き日本人に宿る「相手を思いやる気持ち」その精神ではないだろうか。

医療の現場は日々進歩し、専門分化はさらに進んでいる。電子カルテをはじめ機器の進歩も目まぐるしく、医療者も患者も以前に比べて便利になったと実感することは多い。しかし、実際に最後は人と人のコミュニケーションが重要なポイントとなる。医療者間や医師―患者間のコミュニケーション不足で日々ストレスを経験する人も多いだろう。その際に思い出してもらいたいのは「プロフェッショナルとして相手を思いやる気持ち」である。

医療者も患者を中心とした「ONE TEAM」である。医療者は困っている患者に最善の医療を提供するために集まった1つの「TEAM」である。近年は医療不信や訴訟の問題などが注目され、いかにリスクを避けるかに主眼が置かれ、患者の心の声が聞こえづらくなっている気がする。患者の気持ちを知るためには医療のプロとして相手を思いやることを忘れないことが重要となる。

私自身、現在教員という立場で医学生や研修医に接する機会が多い。彼らの多くは「勉強」ができる優秀な学習者であることは疑う余地はない。忙しさの中でとかく忘れがちな「相手を思いやる」精神を忘れないように、若い医療者にも伝えていければ、と思う。

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