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医師の働き方改革を考える[炉辺閑話]

No.4993 (2020年01月04日発行) P.61

佐田尚宏 (自治医科大学附属病院病院長)

登録日: 2020-01-04

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今回の働き方改革は2015年12月の電通事件、2016年1月の新潟市民病院事件を契機として議論が始まり、2019年4月から働き方改革関連法が施行されました。医師については5年間の猶予期間が設定されていますが、2024年4月以降は地域医療暫定特例水準(B水準)および集中的技能向上水準(C-1、C-2水準)を例外として、医師の時間外労働時間は年間960時間が法的な上限値になります。過労死水準が時間外勤務80時間/月とされているなか、B、C水準の2036年3月までの上限値、年間1860時間(155時間/月)には議論がありますが、厚生労働省の調査によると病院勤務医の10%以上がより長時間の時間外勤務をしている現実があります。今回の議論は従来グレーであった医師の働き方、特に大学病院の医師の働き方を外勤、当直を例外とすることなく真正面から検討されている点を個人的には高く評価しています。その一方で、医師の勤務を時間で処遇する考え方には馴染まない面も感じています。熟練した外科医が2時間で終わる手術を、4時間かけて未熟な修練医が行ったほうが高い報酬が得られる制度には明らかに矛盾があります。

医師の働き方改革実現には、従来あまり検討されていなかった「医療の効率化」に取り組むことが必要です。未来の目標を設定する際には何を固定するかで方法論、結果が変わります。従来の医療提供体制を固定すると、働き方改革のためには「医師数の増員」が必要になり、提供する医療の量・質を保つために地域から医師を引き上げるという、2000年代前半の新臨床研修制度導入時の悪しき前例が再現されることになります。固定すべきは未来の提供する医療の量・質であり、そのためには従来の医療提供体制を根本的に見直し、いかに効率的に医療を提供するかを考えることが唯一の解決策です。トヨタをはじめとした日本企業は1ドル360円の時代から80円の時代まで、働き方の改善、生産の効率化で対応してきました。日本の医療界も同様の発想が必要と感じています。当院では「医師と看護師の新たな協働関係構築」を重点課題として取り組んでいます。

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