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高LDLコレステロール血症[私の治療]

No.4988 (2019年11月30日発行) P.42

塚本和久 (帝京大学医学部内科学講座主任教授)

登録日: 2019-12-02

最終更新日: 2019-11-27

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  • 動脈硬化性疾患の強い危険因子であるLDLコレステロール(low density lipoprotein cholesterol:LDL-C)値が高くなる病態であり,家族性高コレステロール血症(familial hypercholesterolemia:FH)をはじめとした原発性のものと,代謝疾患,内分泌疾患,腎疾患などに伴って生じる続発性のものが存在する。

    ▶診断のポイント

    早朝空腹時に総コレステロール値,high density lipo-protein cholesterol(HDL-C)値,中性脂肪値を測定し,Friedewaldの式でLDL-C値を算出し,140mg/dL以上を高LDL-C血症と診断する。また,高リスク病態ではLDL-C管理目標値が120mg/dL未満のため,120mg/dL以上140 mg/dL未満を境界域高LDL-C血症と診断する。

    ▶私の治療方針・処方の組み立て方

    現在の日本における脂質異常症の多くは肥満やメタボリックシンドロームといった生活習慣病に伴う続発性のものであり,原発性脂質異常症においても生活習慣の乱れが脂質異常症を悪化させる。それゆえ,薬物療法を行う前に食事療法や運動療法による生活習慣の改善,体重の適正化を指導する。また,ネフローゼ症候群,甲状腺機能低下症,クッシング症候群などに伴う続発性脂質異常症では原疾患の治療を優先し,原疾患および生活習慣の改善を行っても脂質異常症が存在している場合に,薬物療法を考慮する。特に,甲状腺機能低下症においては,原疾患に気づかずにスタチンを投与するとCK上昇・横紋筋融解症を起こしやすいので,必ず初診時には除外診断しておく。

    原発性脂質異常症であるFHは200~500人に1人と高頻度の遺伝性疾患であるとともに,動脈硬化性疾患発症リスクが非常に高い疾患であるため,腱黄色腫や結節性黄色腫といった身体所見を確認し,冠動脈疾患の家族歴を聴取することで見落としがないようにする。

    FHの診断がついた場合は,生活習慣改善と同時に薬物療法を開始することを考慮する。それ以外の症例においては,「動脈硬化性疾患予防ガイドライン2017年版」1)の脂質管理目標値設定のフローチャートに従って,それぞれの症例をカテゴリー分類(低リスク,中リスク,高リスク,二次予防)し,LDL-C管理目標値を設定する。LDL-C管理目標値は,低リスク160 mg/dL未満,中リスク140mg/dL未満,高リスク120mg/dL未満,二次予防100mg/dL未満,である。なお,FHおよび急性冠症候群発症後1年以内の二次予防症例,および他の高リスク病態を合併する糖尿病二次予防症例は70mg/dL未満の厳格な管理をめざすことも考慮する。また,一次予防のFH症例の管理目標値は,投薬開始前の値の50%未満,または100mg/dL未満,である。吹田スコアを用いた対象者のカテゴリー分類化・管理目標値設定には,日本動脈硬化学会の作成した無料アプリ「冠動脈疾患発症予測・脂質管理目標値設定アプリ」が有用である。

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