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■NEWS 患者への事前説明の算定要件化を提言 「機能強化加算」で支払側

No.4985 (2019年11月09日発行) P.70

登録日: 2019-10-31

最終更新日: 2019-10-31

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中央社会保険医療協議会の支払側委員は1030日の総会に、2018年度改定時に導入された「機能強化加算」について、文書による事前説明を要件化することを提案した。これに診療側委員は、診療に支障が出る可能性があると強く反発。かかりつけ医機能の普及・啓発の必要性は認めながらも、医療費を意識した受診行動を促すのは保険者の役割だとして、診療報酬以外での対応を求めた。紹介状なしでの大病院受診時定額負担についても議論。400床未満の地域医療支援病院に広げる方向で概ね意見が一致したが、地域医療支援病院の承認要件である200床以上にまで一気に拡大することには、慎重論も示され、意見が割れた。

18年度改定検証調査によると「機能強化加算」の届出医療機関の患者は、非届出医療機関の患者に比べて、かかりつけ医を決めている割合が高く、当該医療機関に他の医療機関の受診状況を伝えた患者は71.5%、処方薬の内容を伝えたのは68.5%、お薬手帳を見せていたのは55.5%を占めた。また、非届出医療機関が満たすのが困難な施設基準では、「地域包括診療料」や「地域包括診療加算」などの届出と、休日・夜間の問い合わせへの対応が上位だった。これらのデータを踏まえて厚生労働省は、かかりつけ医機能を評価する「機能強化加算」や「地域包括診療料」などの算定要件と施設基準の見直しを論点として総会に提示した。

議論の冒頭、支払側の代表として口火を切った幸野庄司委員(健康保険組合連合会理事)は他院の受診状況の把握や、お薬手帳の提示を受けていない届出医療機関が一定数ある点に、「これら医療機関は、かかりつけ医の体制を有しているが、機能を果たしているとは言い難い」と強い問題意識を表明。かかりつけ医機能や、受診するメリットを広く周知して、国民自らがかかりつけ医を選ぶ取り組みを推進する必要があるとして、「かかりつけ医機能を有していることの院内掲示はもちろん、文書の提示により丁寧に説明することの要件化を提言する」と述べた。

これに対し診療側委員は、丁寧な説明をすれば1人に30分近く要する可能性があり、診療に支障を来たす恐れがあるうえに、働き方改革の流れにも逆行しかねないなどと反発。松本吉郎委員(日本医師会常任理事)は、「医療機関のかかり方や医療費を意識した受診行動を促すのは、医療機関だけでなく保険者の役割だ」とし、「かかりつけ医機能の評価は緒についたばかりであり、次回改定では一層充実できる対応を図っていくべきだ」との認識を示した。

■大病院受診時定額負担、義務化対象施設を拡大へ

一方、現在の大病院受診時定額負担の義務化対象は、特定機能病院と許可病床400床以上の地域医療支援病院で、義務化対象ではないが、一般病床200床以上の医療機関も選定療養費として紹介状なし患者からの定額負担の徴収を認められている。前出の改定検証調査では、現行では義務化対象ではない許可病床200399床の地域医療支援病院の91.1%が患者から特別の料金を徴収していることが明らかになっている。

この日の議論で、定額負担の義務化対象を400床未満の地域医療支援病院に拡大する方向に異論は出なかったが、どこまで広げるかについては、「400床以上に拡大しても受診行動に変化がないため、200床以上の地域医療支援病院に拡大するべきだ」(幸野委員)、「地域医療支援病院についての拡大はいいが、何床以上とするかは別に議論する必要がある」(島弘志委員・日本病院会副会長)など、見解が分かれた。猪口雄二委員(全日本病院協会会長)は、医療機関が少なく、定額負担対象の病院にかからざるを得ない地域への影響を懸念、「定額負担を徴収しなくてもいい要件を地域によって広げてもいいのではないか」と述べた。

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