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性別違和(性同一性障害)[私の治療]

No.4979 (2019年09月28日発行) P.57

針間克己 (はりまメンタルクリニック院長)

登録日: 2019-09-25

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  • 「性同一性障害」は,DSM-5において病名が「性別違和」へと変更され,疾患概念にも変更がみられる。「性別違和」とは,もともとは指定されたジェンダー(gender:性別)に対するその人の感情的認知的不満足を表す症状用語であったが,診断名としての「性別違和」はさらに特異的に定義される。
    診断名の「性別違和」とは,その人により体験または表出されるジェンダーと,指定されたジェンダーとの間の不一致に伴う苦痛を意味する。「指定されたジェンダー」とは,通常出生時に行われる,婦人科医や助産師によって指定される性別のことである。体験または表出されるジェンダーとは,必ずしも反対のジェンダー(男性に対して女性,女性に対して男性)に限らず,「指定されたジェンダーとは異なる別のジェンダー」も含まれる。すなわち,「自分は男性でも女性でもなく中性だ」といったジェンダーのものも含まれる。

    ▶診断のポイント

    性別違和は年齢により異なる表れ方をする。出生時の性別が女性の場合,思春期前には「男の子になりたい」という願望を表出したり,「男の子である」と主張する。男の子の服装や遊びを好む。出生時の性別が男性の場合,思春期前には「女の子になりたい」という願望を表出したり,「女の子である」と主張する。女の子の服装や遊びを好む。

    成人においては,第一次および第二次性徴から解放されたいと望んだり,他のジェンダーの第一次および第二次性徴を得たいと望む。体験されたジェンダーの行動,服装,特徴を取り入れる。指定されたジェンダーとして,周囲の人にみなされることや社会で生活することに不快感を覚え,体験されたジェンダーとしてみなされ,生活したいと望む。

    ▶私の治療方針・処方の組み立て方

    性別違和に対する,診断および治療の指針として,国際的には「世界トランスジェンダー・ヘルス専門家協会(World Professional Association for Transgender Health:WPATH)」の作成した「The Standards of Care」がある。現在第7版が出ており,インターネット上で日本語訳も読むことができる。また国内のものとしては,日本精神神経学会が作成した「性同一性障害に関する診断と治療のガイドライン」があり,現在第4版が出ている。これもインターネットで読むことができる。ただ厳密には,後者はタイトル通り「性同一性障害」が対象であり,「性別違和」を対象にしたものではない。

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