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粉瘤(表皮囊腫)[私の治療]

No.4977 (2019年09月14日発行) P.61

山田大資 (東京大学医学部皮膚科学教室特任講師)

登録日: 2019-09-14

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  • 粉瘤(表皮囊腫)は,表皮細胞で裏打ちされた囊腫で,全身のあらゆる部位に生じうる。表皮もしくは毛包漏斗部由来の上皮成分が真皮内に陥入し,内部に角質を溜めた囊腫である。通常は疼痛などの自覚症状はないが,二次感染を生じた場合や囊腫壁が破れた場合に炎症を生じ,炎症性粉瘤と呼ばれる状態になる。炎症性粉瘤は強い疼痛を伴い,囊腫内部の角質が膿汁様になることがしばしばある。この内容物は特有のチーズ様の悪臭を有することが多い。

    ▶診断のポイント

    【炎症を生じていない粉瘤】

    炎症を生じていない粉瘤は真皮から連続性のある皮内~皮下に存在する腫瘤である。真皮と連続性があることから被覆皮膚との可動性はあまりない。下床との可動性は良好なことが多い。被覆皮膚に開口点(へそ)が確認できる場合が多いが,確認できない例もしばしば経験する。へそが確認できた場合には粉瘤であることがほぼ確定的である。肉眼でへそが確認できない場合,ダーモスコピーを用いると検出感度が増す。エコーでは真皮と連続性のある囊腫構造で,外側陰影と後方エコーの増強を伴う境界明瞭な低エコー腫瘤として描出されることが多い。

    【炎症性粉瘤】

    患者が発赤・疼痛・排膿などを自覚したために受診することが多く,日常診療では炎症性粉瘤のほうがむしろ高頻度で遭遇するかもしれない。炎症が生じる前から腫瘤を自覚していたという患者もいるが,炎症が生じて初めて気づくという患者も多い。炎症が生じる前から腫瘤を自覚していた場合は炎症性粉瘤と診断できるが,そうでない場合は毛包感染症である「癤」との鑑別が問題となる。炎症が強く自壊している場合,炎症性粉瘤では白色粥状角質を混じた特有の臭気を有する膿様液であるが,「癤」の場合にはそれほど臭気は強くない通常の膿汁である。

    ▶私の治療方針・処方の組み立て方

    【炎症を生じていない粉瘤】

    将来炎症を生じる可能性があるため患者に切除を提案する。希望があれば切除する。切除方法はへそ抜き法1)もしくは通常の紡錘形切除を行う。

    【炎症性粉瘤】

    発赤・疼痛が比較的軽度で,触診上波動を触れず硬い結節の場合,抗菌薬内服で改善する可能性があるため,抗菌薬内服で治療開始する。波動を触れる場合には切開し,内容物をドレナージする。

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