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保険診療規則を変えれば在宅医療は増える[長尾和宏の町医者で行こう!!(100)]

No.4973 (2019年08月17日発行) P.62

長尾和宏 (長尾クリニック院長)

登録日: 2019-08-14

最終更新日: 2019-08-13

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伸び悩む在宅医療

地域包括ケアの要は、なんと言っても在宅医療の推進であろう。しかし国が在宅医療に本腰を入れてはや四半世紀たつが、その割には在宅医療の認知度は高いとは言い難い。市民は相変わらず大病院信仰が根強い。日本医師会は「かかりつけ医」構想の浸透を図っているが、十分ではない。英国の家庭医(GP)制度において患者は主治医を選べないが、日本はフリーアクセス下のGP志向であるためか中途半端感が否めない。そこで質の高い総合診療医の養成が急務だと考える。故・日野原重明先生がプライマリ・ケアを説いて40年が経過した。そろそろ国をあげて本気で取り組まないと多死社会のピークである2040年問題は乗り切れない。いや、その前に保険制度自体が破綻するのではと憂いている。そんな想いで8月24日(土)に東京大学(本郷)で「総合診療を推進する会」を開催する。「総合診療の中の在宅医療」を強くアピールするつもりだ。「治す医療から治し支える医療へ」と謳われているが、臓器別縦割り医療への固執は医学会において根強い。総合診療や在宅医療を啓発する上で市民側だけでなく医療者にも多くの課題がある。

講演で全国各地を訪問するが、大半の地域において在宅医の高齢化の悲鳴が聞こえてくる。在宅医療の担い手の中心は60代、70代である。世間一般で言うならばリタイア組という世代が24時間365日という労働基準法とは無縁である在宅医療を担っている。都市部では若い世代の医師が何人か集まり交代制で24時間対応する在宅専門クリニックが増えているが、全国的にみれば一部である。多くの若い開業医には24時間365日対応が大きなネックになっている。では夜間対応は看護師がすればいいじゃないか、という声が聞こえてきそうだ。しかしそうはいかない場合が多い。医師が診察しないと薬の処方も看護師への指示もできないのが日本の法律である。

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