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難治性喘息診断と治療の手引き2019[ガイドライン ココだけおさえる]

No.4968 (2019年07月13日発行) P.38

東田有智 (近畿大学医学部呼吸器・アレルギー内科教授)

登録日: 2019-07-12

最終更新日: 2019-07-10

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  • 主なポイント〜どのようなガイドラインなのか

    1 難治性喘息は喘息患者の5〜10%に存在する

    2 難治性喘息の治療として各種抗体薬が上市され,その特徴について記載した

    3 難治性喘息に対する気管支熱形成術の治療適応について記載した

    4 難治性喘息は種々のフェノタイプを考慮して治療薬を選択する必要がある

    1 総論

    気管支喘息(以下,喘息)の治療は,「喘息予防・管理ガイドライン2018」(JGL2018)1)にある通り,吸入ステロイド(inhaled corticosteroid:ICS)を中心とした治療が基本であり,これらの治療が普及したことで多くの喘息患者がコントロール良好となり,それに伴い喘息死の減少にもつながっている。しかし,一部の患者では適切な治療にもかかわらずコントロールに難渋し,喘息患者の約10%が治療反応に乏しく,コントロール不良な状態にとどまるとされている。

    近年,わが国でも難治性喘息に対する生物学的製剤や気管支熱形成術(bronchial thermoplasty:BT)といった新たな治療法の導入が進んでおり,それに伴い今回新たに「難治性喘息診断と治療の手引き2019」2)が発刊された。

    2 難治性喘息の定義

    本手引きでは難治性喘息を「コントロールに高用量のICSおよび長時間作用性β2刺激薬(long acting β2 agonist:LABA),加えてロイコトリエン受容体拮抗薬(leukotriene receptor antagonist:LTRA),テオフィリン徐放製剤(sustained released theophyline:SRT),長時間作用性抗コリン薬(long acting muscarinic antagonist:LAMA),経口ステロイド薬(oral corticosteroid:OCS),抗IgE抗体,抗IL-5/IL-5受容体α抗体の投与を要する喘息,またはこれらの治療でもコントロール不能な喘息」と定義している。

    難治性喘息は一般的に重症喘息とも呼ばれるが,重症喘息には難治性喘息患者と併存症(重症の副鼻腔疾患や肥満など)の治療への反応が不完全な患者が含まれる。全喘息患者に占める難治性喘息/重症喘息の頻度は5~10%と考えられている2)

    3 難治性喘息の病態

    最近の研究により,喘息は単一の疾患ではなく,いくつかの表現型(フェノタイプ)が存在する複雑な疾患群であることが明らかとなってきた。臨床像や様々な指標をもとに患者を分類し,特徴ある集団にわけていくことをフェノタイプ分類と呼ぶ。重症喘息の臨床的特徴は非常に多様であり,それぞれのフェノタイプに応じて適切な治療を行う必要がある。そしてさらにフェノタイプで分類した集団を規定する遺伝子型を含めた分子などを見出し,分子病態をもとに分類するエンドタイプ分類もでてきている。

    今まで治療に難渋していた難治性喘息の患者を,それぞれの病態に応じて分類することで,より適切な治療が提供されることが期待される。重症喘息に対して,後述する生物学的製剤やBTなどの新たな治療選択が可能となった現在,従来の重症度(治療ステップ)に加え,このフェノタイプ分類が治療戦略のためにも重要と考えられている。フェノタイプ分類とそれぞれの治療の可能性について,図1に示す。重症喘息を予測するための新たなバイオマーカーの開発も今後の課題である。

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