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■NEWS 福生病院の透析終了、「患者の意思が尊重されてよい事案」―透析医学会

No.4964 (2019年06月15日発行) P.65

登録日: 2019-06-03

最終更新日: 2019-06-03

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日本透析医学会は5月31日、公立福生病院(東京都福生市)で透析中止を選んだ44歳の女性患者が死亡した事案に関する声明を公表した。当該症例を「患者自身の意思が尊重されてよい事案」とする一方で、透析終了後の緩和ケア体制の構築を今後の重要な課題と位置づけた。また、透析医療を巡って医療者側と患者側の認識に大きな隔たりがありうることを再認識したとして、意思確認書の取得とカルテへの記載の重要性を強調している。

学会では今年3月、同事案を巡る新聞報道を受け、調査委員会と、外部委員を交えた拡大倫理委員会を設置。福生病院からの報告や提出資料に基づき、事実認定や責任判断には踏み込まず学術的観点から議論を重ねてきた。

調査委の報告によると、44歳の女性患者は重篤な心血管系合併症を有していた上に、内シャント不全を繰り返し、カテーテル挿入による血液透析を拒否していた。これらの事情を踏まえステートメントでは、拡大倫理委の見解として、血液透析の継続は「臨床的に困難な状況と推測された」とし、患者の意思が「尊重されてよい事案である」としている。ただし、同事案では死亡に至るまでに重篤な呼吸困難を伴っていることから、拡大倫理委は今後の課題として、透析終了の前後で医療チームと患者・家族が「人生会議」(アドバンス・ケア・プランニング)を行ったり、緩和ケアプランについて十分に話し合うなど、緩和ケアの体制を充実すべきとした。

■非導入・終了も「患者・家族の意思あった」

調査委と拡大倫理委は、2013年4月~19年2月に同病院で透析非導入・終了となった計23例についても検討を行った。その結果、非導入・終了は主治医から持ち掛けられたものでなく、患者・家族の意思であったことが確認されたとしている。さらに非導入に至った経緯には「臨床的・倫理的に日常的診療から大きな逸脱はなかった」との見解を示し、インフォームド・コンセント(IC)の実施内容も「適切に行われていたようだ」としている。ただし、ICにおける医療者の説明や患者・家族との話し合いの内容を詳細に診療録に残すべきだとした。

20203月までに新提言を作成

 学会は14年に、終末期患者の透析中止の決定プロセスなどを盛り込んだ「維持血液透析の開始と継続に関する意思決定プロセスについての提言」を公表している。学会は今回の事例の検討を踏まえ、提言が「現在の医療にそぐわない点があることを認識した」とし、終末期でない患者や、人生会議、協働意思決定などの観点を追加した新提言を、20年3月末までに作成するとしている。

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