未診断・未治療の慢性閉塞性肺疾患(COPD)が多数潜在していることが指摘されており,喫煙者の診療ではプライマリケアにおいても常にCOPDを疑うことが重要である
COPDの診断の基本はスパイロメトリーであり,気管支拡張薬吸入後の1秒率が必要である。COPD-Qなどの質問票によるスクリーニングを行い,COPDが疑われる例にスパイロメトリーを含めた精査が有用と考えられる
診療室でも検査が可能な簡易型スパイロメーターも,スパイロメトリーを行うかどうかの判断に有用であると考えられる
慢性閉塞性肺疾患(chronic obstructive pulmonary disease:COPD)の有病率は世界的に増加しており,2020年には死亡原因の第3位になると予測されている1)。厚生労働省の統計によると,わが国では2017年のCOPDによる死亡者数は1万8523人であり,日本人男性の死亡原因の第8位である。近年COPDによる死亡者数は頭打ちになっていたが,2017年は1995年以降で最高値となっている。2000年に行われた日本COPD疫学調査(Nippon COPD Epidemiology Study:NICE Study)では,わが国における40歳以上のCOPD有病率は8.6%,患者数530万人と推定されており2),先進諸国における有病率と同等である。
一方,2014年の厚生労働省の患者調査によると,医療機関で治療を受けているCOPD患者数は約26万人にすぎず,大多数の患者が未診断・未治療の状況に置かれていることを示している。健康日本21(第二次)において,COPDは禁煙による予防と薬物等による治療が可能な疾患であり,早期発見による早期治療が求められている。早期発見により禁煙指導やワクチン接種をより強く推奨でき,プライマリケアにおいて急性増悪を鑑別に挙げることが容易となる。
未診断のCOPDが多いため,COPDの早期発見のための方策を確立することが重要である。これまで,社会に向けてCOPDの啓発を行い,スパイロメトリーを広く行う必要性が指摘されてきた。しかし,スパイロメトリーはいまだに十分には普及しておらず,40歳以上の国民全員にスパイロメトリーを実施することは経費的に困難であり,COPDの高リスク者をスクリーニングし,スパイロメトリーを含めた精査を勧めることが現実的と考えられる。