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貧血を合併した陸上競技者への鉄剤注射の問題点と指針の意義は?

No.4956 (2019年04月20日発行) P.48

髙橋直人 (秋田大学大学院医学系研究科血液・腎臓・膠原病内科学講座教授)

張替秀郎 (東北大学大学院医学系研究科血液免疫病学分野教授)

登録日: 2019-04-17

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  •  2018年12月に日本陸上競技連盟が記者会見し,2019年春から日本学生陸上競技連合などの団体に対する鉄剤注射の原則禁止の指針を策定予定であると発表しました。そこで,貧血を合併した陸上競技者に対する鉄剤注射の問題点と本指針の意義をご教示下さい。東北大学・張替秀郎先生にご解説をお願いします。

    【質問者】

    髙橋直人 秋田大学大学院医学系研究科血液・腎臓・膠原病内科学講座教授


    【回答】

    【安易な注射による鉄過剰症の危険性が認識された】

    陸上競技選手に対する鉄剤注射の問題については,2016年に日本陸上競技連盟から「アスリートの貧血対処7か条」という提言がなされ,安易な使用は避けるよう指導されていました。しかし,鉄剤の注射が長距離・駅伝選手を中心に依然続いており,中には鉄過剰の状態になっている選手がいるとの報道がなされたことから,日本陸上競技連盟として鉄剤注射の原則中止,ガイドラインの作成という強い方向性が打ち出されました。

    長距離選手は競技の性格上鉄不足になりやすい状況にありますので,これに体重のコントロールを目的とした食事制限が加わると,鉄不足が加速することは間違いありません。ただし,この鉄不足に対する対応として即座に注射を選ぶのはやはり間違いであり,まずはきちんと栄養を摂取し,それでもなお鉄欠乏性貧血がある場合は経口鉄剤の投与,経口鉄剤の服用が難しい場合のみ鉄剤の注射という順番になると思います。鉄剤の注射というのは最終的な手段であり,その際には血清フェリチン値を見て鉄過剰にならないようにするということがマストです。

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