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■NEWS ロボット手術の診療報酬加算見送り「今後の費用対効果評価で重要な意味」―二木立氏が講演

登録日: 2019-02-20

最終更新日: 2019-02-20

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本誌で「深層を読む・真相を解く」を連載中の医療経済学者、二木立氏(日本福祉大学相談役・名誉教授)が19日に都内で講演した。2018年度診療報酬改定のうちロボット支援下内視鏡手術に関して、高額な医療機器を理由とした加算が見送られたことを高く評価し、「今後の医薬品・医療技術の費用対効果評価で重要な意味を持つ」との見解を示した。講演は、医療経済研究機構(西村周三所長)が主催した医療経済研究会で行われた。

この日、二木氏は、先月発刊した著書『地域包括ケアと医療・ソーシャルワーク』(勁草書房)の章立てに沿って講演。特に力を入れたという章「2018年度診療報酬・介護報酬改定と医療技術評価」で強調したいこととして、介護医療院の創設とロボット支援手術の保険適用が大幅拡大された反面、機器が高額であることを理由にした加算が見送られたことを挙げた。

ロボット手術は既存手術に比べて追加的効果が証明されていない

ロボット支援手術については、「加算がつかなかったロジックは極めて明確で、既存の内視鏡手術に比べて追加的効果が証明されていないから。これは日頃厚労省に批判的な私でも諸手を挙げて賛成だ」と評価。さらに「こういうことを言うと『診療報酬の点数を抑えると技術の普及が遅れる』との反論があるが、それは嘘」と述べ、1970年代以降に保険収載されたCTやMRI、体外衝撃波結石破砕術、白内障眼内レンズ挿入術は、保険収載時の採算割れ点数が、当該技術の普及を阻害しなかったことを説明。その上で「原価が高いから高い点数をつけるのを止めます、追加的効果がないものは高くしません―。この考えは今後の医薬品・医療技術の費用対効果評価で重要な意味を持つ」と指摘した。

介護医療院が医療者と厚労省との信頼回復に大きく寄与

介護医療院については、小泉内閣が実施した2006年の医療制度改革により介護療養病床の突然の廃止決定、医療療養病床の診療報酬の大幅削減が断行され、医療者の厚労省に対する不信が一気に強まった経緯を紹介。その上で「(療養病床の問題が)介護医療院に軟着陸して、医療関係者の不信が大分収まり、医療者と厚労省との信頼回復に大きく寄与した。日本の医療機関は民間が主体なので、今後の医療改革も、厚労省と医療者の信頼関係の中でやるしかない」と強調した。

「これまで、高額技術により保険財政が破たんすると何度か言われて来たが、それは厚労省の政策で対処できている。今後も適正な値付け・適応の限定をすれば、アンダーコントロールできる」と話す二木氏

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