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安倍内閣の「全世代型社会保障改革」の予防医療への焦点化をどう読むか?[深層を読む・真相を解く(82)]

No.4936 (2018年12月01日発行) P.24

二木 立 (日本福祉大学相談役・名誉教授)

登録日: 2018-11-28

最終更新日: 2018-11-28

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安倍晋三首相は、本年9月以降、「全世代型社会保障改革」を予防医療、健康寿命延伸に焦点化する姿勢を鮮明にしています。首相は、自民党総裁選挙中のテレビインタビューで、財政のために「負担を増やしていくという考え方」を批判し、「医療保険においても、しっかりと予防にインセンティブを置いていく、健康にインセンティブを置いていくことによって、結局、医療費が削減されていくという方向もあります」と強調しました(「NHKニュースウオッチ9」9月20日)。10月5日の経済財政諮問会議でも「今後、3年間で社会保障改革を成し遂げる考え。まずは、健康寿命。高齢者等が安心して生活できる環境を整備していく」と発言しました。

安倍首相のこの指示を受けて、厚生労働省は10月22日、大臣を本部長とする「2040年を展望した社会保障・働き方改革本部」を設置し、部局横断的な政策課題に取り組むため、「健康寿命延伸タスクフォース」等、4つのプロジェクトチームを設けました。さらに、11月20日の経済財政諮問会議に民間議員が提出した「全世代が安心できる社会保障制度の構築に向けて」は、「2019年度予算編成に向けて」推進すべき事項として、「特定健診・特定保健指導事業の医師会モデル」の全国展開や「社会保障サービスにおける産業化」をあげました。

私も予防医療を重視し、健康寿命延伸を目指すことには、国民への強制を伴わない限り、賛成です。しかし、それを「全世代型社会保障改革」の中心に据えること、ましてや予防医療で医療・介護費を抑制できるとの主張には強い疑問を持っています。

本稿では、まず「全世代型社会保障(改革)」の本来の意味を述べます。次に、安倍首相によるそれの予防医療への焦点化は、経済産業省が主導していることを示します。最後に、「全世代型社会保障改革」の予防医療への焦点化は、今後不可欠な医療・介護費の財源確保から目をそらす「ポピュリズム医療政策」(権丈善一氏)であると主張します。

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