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UN/Cr(尿素窒素/クレアチニン)比の低下の原因は?

No.4947 (2019年02月16日発行) P.65

菊池春人 (慶應義塾大学医学部臨床検査医学講師)

登録日: 2019-02-16

最終更新日: 2019-02-12

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UN/Cr(尿素窒素/クレアチニン)比の値は,通常10と言われていますが,一般臨床では20程度と感じています。これが高い場合は,脱水など腎外性の要因によることが多いと思うのですが,低い場合はどのようなことが考えられるでしょうか。また,特に基礎疾患のない元気な人に,UNが15mg/dL,Crが1.2mg/dLといった乖離がみられることがありますが,その要因についてご教示をお願いします。

(石川県 Y)


【回答】

【尿素の産生量が少ない,筋肉量が多い,尿素の再吸収障害など】

UN,Crはともに腎機能〔糸球体濾過量(glomerular filtration rate:GFR)〕の代表的な指標として用いられていますが,どちらも(特にUN)後述のようにGFR以外の変動要因があるため,UN/Crの評価も対象となる集団によって異なると考えられます。したがって,どこまで参考になるかわかりませんが,当院15歳以上のデータについて最初に提示させて頂きます。

当院外来受診患者で15歳以上の男性についてUN/Crを計算すると約10となります。これは透析患者などCrがかなり高値のところまでを含むデータで,Crが5.0mg/dLを超えるとUNはGFR低下だけではあまり上昇せず,極端な高値となる場合はそれ以外の要因のほうが大きいように考えられます。もう少しCr濃度の低いところとして,同じ集団(15歳以上の男性外来患者)でCr 5.0mg/dL以下を集めたデータ(4063例)を図1に示します。この集団で原点を通る直線回帰をしますと,y=16.5xとなるので,UN/Crは約16.5となります。ちなみにCrの濃度を2.0mg/dL以下まで下げるとUN/Crは約17とわずかに上昇します。

UNは短期的な変動要因が多く,ご質問にもあるように脱水時には尿細管での再吸収が増えるため,Crに比べて増加します。その他のGFR以外の変動要因として高値になるものとしては,蛋白異化の亢進,蛋白の過剰摂取,消化管出血などがあります。

一方,Crは肉食時に肉に含まれているCrが摂取されて食後に一過性に軽度高値になることはありますが,それ以外は一般的には短期的な変動要因は少ないと考えられます。ただし,筋肉で産生されるため,筋肉量には大きく影響を受けます。そのため,男女差,年齢差があり,血清中濃度は同じGFRであれば男性>女性,成人>小児,高齢者となります。質問者の方の施設では,たとえば筋肉量の少ない高齢者が主体で,空腹時(脱水傾向)の採血が多いため,UN/Crが約20と高めなのかもしれません。

腎機能(GFR)に対してUN/Crが低値になる場合としては,①尿素の産生が少ない(同化状態,蛋白摂取量の減少,重症の肝障害),②尿細管・集合管における尿素の再吸収障害(尿細管の器質的および機能的異常,バソプレシンの分泌・作用低下),③筋肉量が非常に多いことによるCrの相対的高値,④シメチジンやスピロノラクトンなどの薬物がCrの尿細管分泌を抑制することによるCr高値などが考えられます。

ご質問のUN 15mg/dL,Cr 1.2mg/dLを「乖離」とまでするかどうかはともかく,UN/Crが低値傾向にあるととらえると,「基礎疾患のない元気な人」ということですので,筋肉量がかなり多い被検者で,水分量が十分にあるときの採血(場合によっては肉食数時間後),というような状況が考えられます。

【回答者】

菊池春人 慶應義塾大学医学部臨床検査医学講師

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