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国内外の肥満薬物治療の進歩は?

No.4947 (2019年02月16日発行) P.60

龍野一郎 (日本肥満症治療学会理事長/東邦大学医療センター佐倉病院内科学講座 主任教授)

石垣 泰 (岩手医科大学医学部内科学講座糖尿病・代謝・内分泌内科教授)

登録日: 2019-02-18

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  • 国内外の肥満薬物治療の現状および進歩についてご教示下さい。
    岩手医科大学・石垣 泰先生のご回答をお願いします。

    【質問者】

    龍野一郎 日本肥満症治療学会理事長/東邦大学医療センター佐倉病院内科学講座 主任教授


    【回答】

    【体重減少が期待できる糖尿病治療薬が出てきている】

    肥満症治療の基本は,食事・運動療法を中心にした生活習慣の改善です。肥満者の生活習慣は変えられないことも多いのですが,他の生活習慣病と違って肥満症には適応となる薬剤がほとんどなく,治療に苦慮することが多い分野です。

    マジンドールはわが国で唯一使用可能な抗肥満薬です。中枢におけるノルアドレナリンの再取り込み阻害薬で,食欲中枢の抑制と満腹中枢の促進作用によって食欲を抑制します。日本人を対象にした試験では,3カ月間の投与で平均4.2kgの体重減少が得られており,症例によっては10kg以上減量する人もいます。しかし,口渇や便秘,悪心といった副作用がみられ,また精神障害を有する患者には投与禁忌となっています。依存性に注意が必要なことから,2週間処方で期間も3カ月間に限定されており,BMI 35以上の高度肥満にしか適応が認められていないなど,処方しにくい印象は否めません。3カ月の処方期間が終了した後にリバウンドする患者が多いことも問題です。

    世界ではいくつかの中枢性食欲抑制薬が使用されています。セロトニン受容体アゴニストであるlorcaserinは選択性が高く副作用が少ないため,米国を中心に評価が定着しています。しかし一方で,わが国でも第3相臨床試験までいったセロトニン・ノルアドレナリン取り込み阻害薬であるsibutramineは頻脈や血圧上昇のため,カンナビノイド阻害薬であるrimonabantはうつ症状増悪のため,いずれも開発中止となっています。

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