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都市部での多職種連携の実践─都市部こそ総合診療医が求められる時代に[プライマリ・ケアの理論と実践(3)]

No.4946 (2019年02月09日発行) P.10

大橋博樹 (多摩ファミリークリニック院長)

登録日: 2019-02-08

最終更新日: 2019-02-06

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SUMMARY
都市部でも独居高齢者や社会的格差への対応など,医療・介護・福祉が協力して対応すべき問題が山積している。地域包括ケアでは多職種連携によるチームでの関わりが必須であり,総合診療医はその中核的存在として今後担っていく必要がある。

KEYWORD
地域包括ケア
高齢者に対するケアと思われがちだが,本来年齢・性別を問わずすべての住民に提供されるものである。特に高齢者,子どもや女性,経済的に困窮している人など弱者に対していかに多職種で眼を向けられるかが地域のケア力となる。

大橋博樹(多摩ファミリークリニック院長)

PROFILE
2000年獨協医科大学卒業。武蔵野赤十字病院で初期研修の後,筑波大学附属病院総合診療科,亀田総合病院家庭医診療科で研修。川崎市立多摩病院総合診療科医長。2010年多摩ファミリークリニックを開業。東京医科歯科大学臨床准教授

POLICY・座右の銘
優しいヤブ医者にはなるな

1 都市部で総合診療医は必要とされるのか?

日本専門医機構による総合診療専門医の研修プログラムが2018年より開始された。そこでは医療資源の乏しい地域での1年以上の研修が義務づけられている。確かに臓器別専門医が十分に存在しない地域での総合診療医の役割は想像しやすい。では,都市部では総合診療医へのニーズはないのか?答えは否である。

多くの地方で高齢化はピークを迎え,人口減少が始まっている地域も多い。しかし,都市部では現在,高齢化の真っ只中である。そして,都市特有の問題として,独居高齢者や社会的格差への対応も迫られている。独居高齢者への訪問診療は年々増加している。このようなニーズに誰が対応しているのか?既存の診療所による訪問診療への参入はあまり増えていない。24時間対応の困難さや現状でも多くの外来患者を抱え多忙であるなどの理由が挙げられるが,それだけではない。在宅医療そのものの高度化も大きな要因となっている。

在宅医療というと,以前は昼休みに定期的に訪問診療を行ったり,急な発熱等に対して往診を行うなどの診療が中心だった。しかし,現在は悪性腫瘍患者における各種デバイスを用いた疼痛管理や神経難病患者に対する人工呼吸器管理など,専門的知識を必要とする場面が増えてきたのである。また,地域包括ケアにおけるリーダー的存在としての総合診療医の役割も期待される。

ある多職種の会合での1コマである。「先生,膵癌で終末期のAさん,徐々に食欲が低下してきてベッド上での時間が長くなりました。訪看は医療で入った方が良さそうです。早急に区変もかけますね。サ担会を開いて今後の方針を相談しましょう」─。こうした単語の略称のほとんどは介護保険制度や福祉制度の知識がないと理解できない。医療だけでなく,介護・福祉にも精通した地域包括ケアのリーダー的医師が都市部でも必要である。

本稿では筆者の勤務する神奈川県川崎市多摩区での具体的な実践を紹介し,都市部における多職種連携について考察する。

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