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2つの外語:ガバナンスとモニタリング[炉辺閑話]

No.4941 (2019年01月05日発行) P.65

土橋和文 (札幌医科大学附属病院病院長・病院管理学兼循環器・腎臓代謝内分泌内科教授)

登録日: 2019-01-04

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閑話とは、「無駄話、もの静かな会話、本題ではない話」の意、本誌『炉辺閑話2019』をお借りして、しばし私憤にお付き合い下さい。

「カタカナ」化した外語は本意から離れた別な隠れた意味を持ち一人歩きする。このところ、医療管理の分野での流行語大賞とも思える「ガバナンス」と「モニタリング」の羅列と蔓延は凄まじい。猫も杓子も枕詞として大連呼だ。

「ガバナンス」は、統治、支配、管理およびその機構や方法が真意と思われる。しかし、一部企業および体育系団体での不祥事で問題となる組織統治不足ないし不正から「コーポレートガバナンス」の見直しが叫ばれ、これに連動し、「ガバナンス」も不祥事を回避する管理者の果たすべき職務として文言暴走している。少なくとも小生には、医療人として企業体に所属し、「就社」はした記憶はない。文字通り「就職」であった気がする。よって、「ガバナンス」された記憶はない。むしろこれまでは、「ガバナンス」による正の面:正義、思慮、勇気、節制が、負の面:横暴、卑劣、野蛮、臆病に転じた事例は無数にある。過去の反省から、管理者は統治すれ支配せずに、「ロールモデル」として「リーダーシップ」と「マネージメント」を発揮するのが尊いと理解されてきた。

一方、「モニタリング」。「ストラクチャー(構造)」→「プロセス(過程)」→「アウトカム(結果)」の中で、性善説に立った自己申告型「報告」から、性悪説に立った管理者による全件報告型「モニタリング」に変容している。加えて、同様の仕組みが臨床・教育・研究の全領域の随所に同時多発的に求められていることが特徴である。効果がないばかりか、毎月1回は何らかの監査報告会と毎週1回の関連委員会・説明会・勉強会、時間の浪費である。

規律違反には、一時的なの新規範の構築の必要性は理解できるが、「モニタリング」による「ガバナンス」強化の羅列は頂けない。かつてたどった、制約と窮屈な集団となるとき、医療の不確実性とそれ故の進歩と突破力が灰燼に帰すと危惧するのは、余分な老婆心だろうか?

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