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「低栄養」考[炉辺閑話]

No.4941 (2019年01月05日発行) P.57

上瀬英彦 (上瀬クリニック院長)

登録日: 2019-01-04

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私たちが何気なく使っている「低栄養」という言葉は、実はかなりあいまいな言葉であり、最近気になって仕方がない。ある患者さんをみて、この方が低栄養かそうでないのかの診断は、どのようにしたらよいのであろうか?

まず体重をチェックするであろうし、最近の食欲もチェックするであろう。体重だけでは筋肉量と脂肪量の比率によっても意味は異なる。身長を加味したBMIも高齢者では円背の方も多く、正確な値が出ない。何か客観的なバイオマーカーがないのだろうか?

よく使われるのが血清アルブミン値である。3.8mg/dL以下で要注意、3.5mg/dL以下で低栄養と判定される。血清アルブミン値で低栄養の評価はクワシオルコル型の低栄養では通用するが、エネルギー不足が主因のマラスムス型には不適である。このタイプは体重の減少で評価することになる。

この両者に共通する因子は免疫能である。低栄養は免疫不全状態でもある。一番簡単な免疫能をみる方法としてリンパ球数が知られているが、これ以上の簡単なマーカーはないのであろうか?

近年、フレイルが注目されている。健常者と要介護者の間に位置する状態であり、キーは可逆性であるということである。フレイルにも身体的フレイル、メンタルフレイル、社会的フレイルが知られている。老化の延長にあるフレイルは、当然低栄養と密接につながっている。歯科領域からはオーラルフレイルが注目されているが、この状態に続くのが低栄養、つまり栄養フレイルと言える。栄養フレイルの重症型がカケキシアとなる。つまり、健常からオーラルフレイル、栄養フレイル、カケキシア、最後は死のカスケードである。この一連を的確に評価できる簡単なバイオマーカーはないのだろうか?

複雑な因子の組み合わせではダメ。とにかく、フレイルを早期に診断し栄養介入と運動介入とメンタル介入で脱フレイルを図ることが、超高齢社会を迎えているわが国では待ったなしの課題であると言える。

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