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子どもの貧困[炉辺閑話]

No.4941 (2019年01月05日発行) P.101

廣瀬伸一 (福岡大学医学部小児科教授・国際小児科学会執行理事/第121回日本小児科学会会頭)

登録日: 2019-01-07

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「日本の子どもの貧困率は世界一悪いレベルです」と話すと、驚かれる方が医師の中にも多い。世界最悪はひとり親家庭の子どもの貧困率(50.8%、 2017年)に限ってのことだが、全体の子どもの貧困率(13.9%、 2017年)とて、OECD(経済協力開発機構)加盟国中、悪いほうから10番目に入るレベルだ。

外国人は「こんな豊かな日本で貧困の子どもがいるとは信じられない」とか、日本人には「貧しい子どもを目にしたことがない」とか言われる。この誤解を解くには、子どもの貧困とは何かを説明する必要がある。ここで言う子どもの貧困とは、簡単に言うと相対的貧困で、世帯の所得が国内平均の半分(貧困線)に満たない家庭に暮らす18歳未満の子どもをさす。言い換えれば、一見豊かに見えるこの国に、貧困の子どもは7人に1人、実に270万人余もいることになる。この子どもたちの多くは貧困線の少し下に位置することが多く、皆がイメージする貧困、すなわち絶対的貧困ではなく、衣服などでは容易に識別できない。しかし、貧困は子どもたちの進学率に強く影響しており、進学しても中退率も高く、続く就職に大きな陰を落とす。したがって、貧困家庭の子どもたちは、大人になっても貧困の負のスパイラルから抜け出ることが難しくなる。さらに、子どもの貧困は、栄養、疾病、死亡率等にも影響しており、ここに医療格差も生ずる。

小児科医として心痛むのは、子どもの貧困は、発達期に形成されるべき自己肯定感を大いに損ねることだ。さらに、貧困家庭は児童虐待の危険性がきわめて高く、子どもの命さえ脅かされることを目の当たりする。少子化で子どもが大事にされ、光輝く華やかな世界の陰で、いかに多くの子どもたちが貧困故に、小さな幸福さえ享受できないことに嘆息する。

子どもの貧困率はここ数年ごくわずかではあるが改善している。2019年度の税制改正大綱ではひとり親に対する税制上の支援と低所得者への支援策が含まれ、喜ばしい。我々医療従事者も、この問題に目を向け、明日の日本を担う子どもを貧困の問題から救いたいと切に願う。

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