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脊椎・脊髄外科における脳神経外科医対整形外科医[炉辺閑話]

No.4941 (2019年01月05日発行) P.41

德橋泰明 (日本大学医学部附属板橋病院病院長)

登録日: 2019-01-03

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脊椎・脊髄外科領域は、脳神経外科と整形外科の境界領域で、互いの診療科の協力関係が悪いと言われていた時代がありました。私が入局した38年前は、脊椎・脊髄手術も数多くこなす脳神経外科に対し、整形外科医の一部で本格的に脊椎・脊髄外科に取り組みはじめた時期でした。それよりかなり昔「ベン・ケーシー」という米国の人気テレビドラマ(白衣にケーシースタイルと言う言葉が残っています)があり、神経外科医であるベン先生が脊髄腫瘍も手術していました。これをみると、やはり神経外科医である脳神経外科医のほうが脊椎・脊髄手術に向いているのかな、と感じたことを思い出します。

その後の脊椎・脊髄外科は各分野で発展してきましたが、わが国では脳神経外科、整形外科両者が切磋琢磨するように発展してきました(実に幸せなことです)。しかし、発展途中の私の医局では、髄内腫瘍を脳神経外科に紹介すると先輩に怒られ、「他大学でもその手術ができる整形外科に紹介すればよい」、「おまえが手術しないで当院の脳神経外科に紹介するぐらいなら、門外漢の自分たちが手術したほうがましだ」とどなられたこともありました。脳神経外科の教室でも同様のことはあったのかもしれません。

しかし、実際には診療上、患者をめぐってのトラブル、取り合いなどは起こることはありませんでした。現在の厳しい医療環境から院内でけんかをしている余裕がないこと、両診療科の優れた先達による脊椎・脊髄外科領域の優れた業績により、両診療科は以後30余年にわたり円満な関係で診療してきました。疾患によっては院内紹介、困ったことは積極的に相談(患者と病院を守ることを最優先)、互いの技術の導入、有効活用に努力してきました。おそらく全国的にも同様だと思います。そして、両科が協力してできた二階建て専門医制度も順調に船出したことをみると、全国的にもうまくいっているでしょう。

専門医機構から、その良好な関係から「二階建て専門医制度の見本」と言われるようになったのをみると、しみじみ、かつての昔を思い、不思議な気がします。

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