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東京2020オリンピック・パラリンピックで死者を出すわけには……[炉辺閑話]

No.4941 (2019年01月05日発行) P.76

尾﨑治夫 (東京都医師会会長)

登録日: 2019-01-05

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この原稿が読者の皆さんの目に留まる頃には、オリンピック開催まで、既に600日を切っているであろう。昨年の夏の猛暑は、皆さんの記憶に新しいと思うが、2020年の夏はさらに暑くなるという予測もある。1964年のオリンピックのときは開催が10月だったので問題はなかったわけだが、今度のオリンピックは、スポンサーの強い意向があるとはいえ、猛暑の中の開催ということで、選手のみならず観客にとっても、熱中症と向き合いながらのオリンピック・パラリンピックの観戦ということになる。

日本特有の高い湿度を伴う40℃近い暑さの中で競技を行うわけで、特にマラソンや競歩といった競技では、その危険性は深刻で、現在の午前7時スタートでは1時間後には暑さ指数が31℃以上となる(熱中症予防の運動指針では、この条件下での運動は原則禁止ということになっている)。選手はもちろん、観客にとっても命の危険さえあるということで、この分野での研究をしている中京大学の松本孝朗教授(運動生理・スポーツ栄養学)は、開始時間を午前5時30分に早めることを勧めている。これであればマラソン終了時まで、ほぼ安全な状態が確保できる、と主張している。

東京都医師会ではこの松田教授の研究結果と主張に賛同し、日本医師会と協働して、マラソン開始時間を早めることを関係機関にお願いしてきた。主催者側は、この時間には交通機関が動いておらず、競技スタッフ、ボランティア、観客が揃わないということを理由のひとつに挙げている。現時点では、開始時間を早めることに消極的であるが、大晦日などには元日まで交通機関を動かしていることなどを考えると、国、組織委員会、東京都の英断があれば、実現は不可能とは思えない。

万が一、選手や観客を含め熱中症で多くの人が倒れ、最悪のケースとして死者が出たりしたら、それこそオリンピック・パラリンピック史上、例を見ない汚点を日本が残すことになりかねない。

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