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全面禁煙の飲食店を利用しましょう![炉辺閑話]

No.4941 (2019年01月05日発行) P.32

大和 浩 (産業医科大学産業生態科学研究所健康開発科学研究室教授)

登録日: 2019-01-02

最終更新日: 2018-12-25

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自分が禁煙してから、四六時中、日本の喫煙対策を進めることを考えています。ニコチン依存症患者が一転、「タバコ対策依存症」になってしまいました。この誌面をお借りして、1人でも多くの医師に知って欲しいことがあります。それは、2005年に発効した「たばこの規制に関する世界保健機関枠組条約」です。第6条:消費が低下するほどの値上げ(先進国では1箱1000円)、第9条:含有物の規制(メンソールの禁止)、第11条:画像による強い警告、第13条:一切の広告の禁止、第14条:禁煙治療と無料の禁煙相談電話の普及、など諸外国では条約に添った対策が着実に進んでいます。

私の専門は第8条、受動喫煙対策です。詳細を規定するガイドラインで「喫煙室は不可、法律で屋内全面禁煙」とされ、既に55カ国・米国27州で施行されました。2010年、WHOと国際オリンピック協会が「タバコのないオリンピック」に合意したことで、2014年のソチ大会がきっかけでロシアが屋内禁煙化。韓国も2015年に飲食店を原則禁煙とする法律を施行して、翌年の平昌大会を迎えています。

日本も遅ればせながら2018年、①学校・病院(精神科、緩和ケアも対象)・行政機関は敷地内禁煙、②企業・飲食店等は原則禁煙(喫煙専用室可)とする改正健康増進法を成立させました。しかし、既存の飲食店のうち55%は小規模店(=客席100m2以下)として例外扱い、喫煙可を選択できる甘い規制になってしまいました。そのため、五輪大会を開催する東京都は「従業員を雇用する店舗は面積にかかわらず原則禁煙」とする条例を成立させたのです。都条例なら84%の飲食店が禁煙化の対象です。会場となる千葉市、静岡県、そして、万博を誘致した大阪府・市でも対策強化の検討が始まりました。

東京都のディーゼル規制が日本の空をきれいにしたように、都条例がレストランの空気をきれいにする起爆剤になることを「タバコ対策依存症」として期待しています。医療関係者は禁煙レストランしか利用しないことで、禁煙化の流れを加速させていきましょう。

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