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高齢者とリハ栄養 [今日から使える栄養療法の質を上げるケーススタディ(1)]

No.4787 (2016年01月23日発行) P.41

監修: 若林秀隆 (横浜市立大学附属 市民総合医療センター リハビリテーション科 診療講師)

小坂鎮太郎 (練馬光が丘病院総合診療科NST QIT(Quality Improvement Team))

登録日: 2016-09-08

最終更新日: 2017-01-27

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  • 【症例】 高血圧,不眠症,逆流性食道炎の既往がある72歳の男性,元新聞記者
    【現病歴】 ‌7年前に退職後,妻と2人暮らしで旅行などを楽しんでいたが,5年前に妻が乳癌で他界してからは独居であった。ADL,IADLはすべて自立していて,記者時代の仲間としばしばお酒を飲みに行くことを楽しみとしていたが,6カ月前に仲の良かった元記者と口論となってからは参加しなくなっていた。娘が1人いるが,夫の仕事の都合で海外在住で,年に1回会う程度であった。もともと食が細く172cm,58kg(BMI 20)であったが,ここ2~3年で体重が減って,現在は49kg(BMI 17)まで減少した。年齢相応の検診(大腸癌,上部内視鏡,胸部X線,腹部大動脈瘤)は2年前に受けている。最近は歩行速度が遅くなり,階段昇降が疲れやすくなってきた。この半年以内に3回の転倒歴があり,いずれも前方に転倒したが幸い骨折には至らなかった。今回,娘が帰国した際に父の元気のない様子を見て心配になって受診した。飲酒についてのCAGEテストは0項目。
    【既往歴】 60歳時に高血圧,64歳時に逆流性食道炎,70歳時に不眠症
    【内服薬】 エナラプリル10mg,ランソプラゾール15mg,ゾルピデム5mg
    【アレルギー】 なし
    【社会歴】 ‌独居,カナダに住む長女,喫煙歴なし,飲酒は20歳からビール500mL缶3本/日,ADL/IADLは自立,居住環境:2階建て一軒家,寝室は2階,介護保険申請なし
    【身体所見】 ‌身長172cm,体重49kg,BMI 17,血圧172/88mmHg,脈拍84bpm・整,呼吸回数16回/分,SpO2 98%(室内気),体温36.2℃
    ‌頭頸部:眼瞼結膜は桃白色,眼球結膜は黄染なし,頸静脈怒張なし,頸部リンパ節腫脹なし 胸部:呼吸音に左右差なし,cracklesなし 心血管:心音は整,S1・2亢進なし,S3(−)・S4(−),心雑音なし 四肢:浮腫なし,手掌紅斑あり 握力:右24kg,左22kg 認知機能:長谷川式認知症スケールで20/30点,老年期うつ病評価尺度(GDS15)にて4/15点,興味の減退や希死念慮は認めない
    【検査所見】 ‌白血球6420/μL,リンパ球960/μL,Hb 12.5g/dL,Plt 24×104/μL,TP 7.0g/dL,Alb 3.4g/dL,AST 30IU/L,ALT 45IU/L,BUN 17.8 mg/dL,Cr 0.6mg/dL,Na 135mEq/L,K 3.6mEq/L,Cl 103mEq/L,Mg 2.0mEq/L,P 3.4mg/dL,CRP 0.6mg/dL

    今回のポイントは以下の3点である。
    ・フレイル,サルコペニアの定義を理解し早期察知をする。
    ・サルコペニアの原因について鑑別しアプローチする。
    ・‌栄養療法の5原則に基づいて原疾患の治療およびリハビリテーション栄養(以下,リハ栄養)の導入を行う。
    それでは前掲の症例について,①栄養療法のスクリーニングと5つの原則に従った初期評価,②治療方針とその内容,③必要栄養量・内容とその投与方法,④今後の栄養投与とリハビリテーション計画,そのほか必要なことを,多職種の目線で考えてみたい。

    残り4,289文字あります

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