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結核菌IFN-γ遊離試験陽性の考え方は?

No.4933 (2018年11月10日発行) P.60

根本健司 (国立病院機構茨城東病院内科診療部 呼吸器内科医長)

登録日: 2018-11-12

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肺結核の既往者で結核菌特異的インターフェロンγ(IFN-γ)ELISPOT陽性者(1カ月に1度ほど通院,経過観察中)と,判定保留の人(どちらも一般状態良好)についてご教示下さい。
「肺結核既往者で陽性者はめずらしくなく,結核の治療は不要」との返事をもらったのですが,それでよいのでしょうか。クォンティフェロン陽性なら結核菌が再活動していると単純に考えるのは間違いでしょうか。

(宮崎県 A)


【回答】

【陽性という結果のみから活動性結核(再発)と診断してはならない】

現在わが国において使用可能なIFN-γ遊離試験(interferon gamma release assay:IGRA)として,クォンティフェロン®TBゴールド(QFT-3G)とT-スポット®.TB(T-SPOT)の2種類が挙げられます。どちらも優れた診断特性を持ち1),結核感染診断の基本として,また結核発病の補助診断として使用されます。

ご指摘の症例は,肺結核の既往者とありますが,治療歴に関する記載がありません。既治療例とした場合,治療によりIGRAが減弱または陰性化するかが問題となります。確かに,活動性結核や潜在性結核感染症の治療によりIGRAの測定値は低下するとした報告はあります2)~4)。しかし,全例が治療後に陰性化するわけではなく,IGRAを治療効果判定の指標として使用することはできません1)。また,IGRA陽性であっても,最近の感染か否かの判断はできません。つまり,肺結核の既往者であれば,治療の有無にかかわらず,外来性再感染や再発を認めなくてもIGRAは陽性となりうるという認識が必要です。

また,IGRAでは結核の発病と感染を区別できません。そのため,ご指摘の症例がIGRA陽性であっても,この結果のみで活動性結核(再発)と診断してはいけません。まずは臨床症状,画像所見,また必要に応じて抗酸菌検査などを実施して,今診ている症例が結核発病の可能性がないかを総合的に判断することが重要になります。

結核発病が否定された場合,治療歴がある肺結核の既往者であれば,治療は不要と考えます。一方,治療歴がない肺結核の既往者(未治療の陳旧性結核病変)の場合は,結核発病リスクが高い(相対危険度6~19)ため,潜在性結核感染症として治療が推奨されています5)

IGRAが判定保留であった場合,QFT-3Gであれば,感染リスクに応じて陽性・陰性を判断し,T-SPOTであれば再検査が推奨されています。その結果,陽性と判断されれば上記に従います。

これまでに証明されたIGRAの優れた診断特性は菌陽性の活動性結核に対する検討で得られた感度であり,感染の危険の小さい集団で得られた特異度です。そのため,診断基準のない潜在性結核感染症や今回ご指摘の症例(肺結核の既往者)に対する正確な感度と特異度はわかっていないのが現状です。つまり,結核感染診断におけるIGRAの使用には限界があることを理解し,結果の解釈には総合的な判断力が必要となります。

【文献】

1) 日本結核病学会予防委員会:結核. 2014;89(8): 717-25.

2) Higuchi K, et al:Respirology. 2008;13(3):468-72.

3) Chee CB, et al:Eur Respir J. 2010;36(2):355-61.

4) Adetifa IM, et al:Am J Respir Crit Care Med. 2013;187(4):439-45.

5) 日本結核病学会予防委員会・治療委員会, 他:結核. 2013;88(5):497-512.

【回答者】

根本健司 国立病院機構茨城東病院内科診療部 呼吸器内科医長

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