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■NEWS 「重度脳性麻痺に関する訴訟が増加している」―弁護士が指摘

No.4925 (2018年09月15日発行) P.20

登録日: 2018-09-10

最終更新日: 2018-09-10

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弁護士の井上清成氏が8日、産科医療補償制度に関して都内で講演し、重度脳性麻痺に関する訴訟が近年増加していると指摘した。講演は、開業医などで構成する日本産婦人科協会のシンポジウムで行った。

産科医療補償制度は、分娩に関連して発症した重度脳性麻痺児と家族に総額3000万円の補償を行うとともに、脳性麻痺の原因を分析し、再発防止策を検討することで、紛争の防止・早期解決と産科医療の質の向上を図る制度。2009年1月1日からスタートし、今年は10年目となる。

井上氏によると、産婦人科全体の訴訟の推移を見ると、2006年には年間161件に上ったものの、2012年~17年の5年間はほぼ50件台で安定している。このうち、重度脳性麻痺の紛争(損害賠償請求事案)や訴訟提起事案の件数について、産科医療補償制度開始から前半期(09年~13年)と後半期(14年~17年)に分けて検討した。

■訴訟件数は2倍、訴訟割合は3倍

その結果、前半期の重度脳性麻痺の紛争は33件で、このうち訴訟提起事案は17件。産婦人科すべての訴訟件数370件における割合は4.6%だった。後半期の重度脳性麻痺の紛争は64件で、このうち訴訟提起事案は34件。産婦人科すべての訴訟件数216件における割合は15.7%だった。このように、産婦人科全般の訴訟件数が減少する一方で、重度脳性麻痺の訴訟提起事案とその割合は増加していた。

増加の原因については、原因分析報告書における原因分析のあり方にあるとの考えを示すとともに「医療安全推進には秘匿性が大事」と強調し、「産科医療補償制度は、医療事故調査制度を見習って、秘匿性を中心とし、産科医療補償制度に特有の原因分析の方法を変えていくべき」と訴えた。

■原因分析報告書要約版の公表が8月に停止

なお、原因分析報告書の要約版はこれまで日本医療機能評価機構のホームページで公表されていたものの、個人情報保護法の改正を理由として今年8月1日から公表が停止された。井上氏は非公表となったことについては歓迎し、「(秘匿性の観点で本来は)公表するものではない」と強調するとともに、「改正法の施行日(2017年5月30日)から1年2カ月は(要約版を公表していたことで)法律違反をしていたことになる」と述べ、「普通なら責任者が謝罪して辞任する問題ではないのか」と疑問を呈した。

「制度開始から10年が経って、やっと原因分析報告書要約版が公表停止になって良かった」と話す井上弁護士

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