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(1‌)免疫チェックポイント阻害薬の奏効メカニズムとバイオマーカー[特集:免疫チェックポイント阻害薬によって変わる抗癌剤治療]

No.4918 (2018年07月28日発行) P.28

佐藤靖祥 (東京大学医学部附属病院免疫細胞治療学講座,胃・食道外科)

垣見和宏 (東京大学医学部附属病院免疫細胞治療学講座特任教授)

登録日: 2018-07-30

最終更新日: 2018-07-25

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生体内のがん免疫応答は,「がん免疫サイクル」のようなダイナミックなシステムとして把握することが重要である

免疫チェックポイント分子による免疫抑制には,T細胞に対する直接と間接,内因性と外因性の抑制メカニズムが存在する

PD-L1発現等の単一の因子をバイオマーカーとして個別の症例に利用するのは困難であり,末梢血から腫瘍細胞・腫瘍周囲環境までのがん免疫の全体像を評価する手法が必要とされている

1. がん免疫サイクルと免疫チェックポイント阻害薬

生体内のがん免疫応答は,ダイナミックなシステムとして成り立っており,単一の因子で評価するのは困難である。がん免疫応答を一連のサイクルとして評価する「がん免疫サイクル(cancer immunity cycle)」という概念が広く受け入れられており,次の7つのステップからなる(図1)。

      

①腫瘍組織から腫瘍抗原が放出され,②腫瘍抗原を樹状細胞などの抗原提示細胞(antigen presenting cell:APC)が取り込み,主要組織適合遺伝子複合体(major histocompatibility complex:MHC)分子に結合させて細胞表面へ提示しつつリンパ節へ遊走する。③リンパ節に到達したAPCはT細胞へ抗原を提示し,抗原特異的なT細胞が活性化する(プライミング)。④活性化T細胞が腫瘍組織へと遊走し(トラフィッキング),⑤浸潤する。⑥腫瘍抗原を発現する腫瘍細胞をT細胞が認識し,⑦攻撃する。T細胞に攻撃され細胞死を起こした腫瘍細胞は新たな腫瘍抗原を放出し,①に戻る1)。この一連のサイクルのどのステップが障害されても効果的ながん免疫応答の誘導が困難となり,がんは免疫監視機構から逃避する。

たとえば,活性化T細胞に発現される細胞傷害性Tリンパ球抗原4(cytotoxic T-lymphocyte antigen 4:CTLA-4)は,樹状細胞上のCD80/CD86と結合すると,T細胞に抑制性のシグナルを伝達する(ステップ③の抑制)。また,活性化T細胞に発現されるPD-1(programmed cell death 1)は,腫瘍細胞に発現したPD-L1(programmed cell death-1 ligand-1)と結合することで,T細胞に抑制性のシグナルを伝達する(ステップ⑦の抑制)。このように免疫応答を制御する作用を持つ分子を免疫チェックポイント分子と呼ぶが,免疫チェックポイント阻害薬はこれらの抑制作用を阻害することで,停滞していた「がん免疫サイクル」を再び進行させ,がん免疫応答の再活性化をもたらす。たとえば,抗CTLA-4抗体はステップ③の抑制を解除し,抗PD-1/PD-L1抗体はステップ⑦の抑制を解除する。本稿では,これらのメカニズムについて概説する。

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