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チモロール含有点眼薬+CYP2D6阻害薬[ドクターのための薬物相互作用とマネジメント(9)]

No.4716 (2014年09月13日発行) P.35

登録日: 2016-09-08

最終更新日: 2017-03-24

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  • サマリー
    β遮断薬のチモロールは,点眼薬として緑内障,高眼圧症に用いられ,単剤(チモプトールなど)での利用のほか,配合点眼薬での利用も増えている。しかし,点眼薬からの吸収で全身性作用を示すことがあり,チモロールの代謝を阻害するCYP2D6阻害薬の併用により副作用が現れやすくなる。パロキセチン(パキシルなど)やキニジン(硫酸キニジン)などのCYP2D6阻害薬との併用を避け,代替薬を用いるようにするほか,併用が避けられない場合にはチモロールの全身への移行を減らすよう,正しい点眼法を指導した上で,全身性副作用の発現に特に注意する必要がある。

    何が起こる?

    点眼薬として緑内障,高眼圧症に用いられるβ遮断薬のチモロールは,単剤(チモプトールなど)で利用されるほか,配合点眼薬(アゾルガ,コソプト,ザラカム,デュオトラバ)としても利用されることが増えている。チモロールは通常の用法・用量で点眼した場合でも,一部が吸収されて血中に移行し,全身性作用を示すことが知られている。
    チモロールは主にCYP2D6で代謝されるため,CYP2D6を阻害する医薬品を服用していると血中濃度が上昇し,β遮断作用による徐脈や血圧低下,気管支平滑筋収縮の増強などの全身性の副作用が現れやすくなる。
    以下に,チモロール点眼薬とパロキセチン併用時に徐脈,低血圧,振戦がみられ,相互作用が疑われた症例1)と,CYP2D6を阻害するキニジンをチモロール点眼薬と併用した際の,チモロールの血中濃度と全身に与える影響を検討した臨床試験の結果を示した2)

    ❖‌チモロール点眼薬とパロキセチンの相互作用が疑われた海外症例1)

    40歳代の男性。緑内障治療のため,数年前よりチモロール点眼薬 (0.25%,1日量は2滴)を使用。パロキセチン(20mg/日),クロラゼプ酸二カリウム,γ-アミノヒドロキシ酪酸(国内未発売)およびピリドキシンを投与開始し,14日後から徐脈(45拍/分),低血圧,軽度の振戦が発現した。相互作用が疑われたため,パロキセチンは投与中止し,チモロール点眼薬(0.25%)の投与は継続した。その後,徐脈,低血圧,振戦は回復した。

    ❖‌チモロール点眼薬の全身性作用とキニジンの体内動態への影響2)

    13人の健康成人において0.5%チモロール点眼薬を鼻腔に2滴点鼻し(点眼時にオーバーフローした点眼薬が鼻腔を経由して全身循環に入ることを想定している),50mgのキニジンを同時経口投与したランダム化クロスオーバー比較試験で,チモロールの血漿中濃度が上昇し脈拍の減少がみられたことが報告されている。
    被験者のうち8人はCYP2D6のextensive metabolizer(EM:活性を有する者),5人はpoor me­ta­bolizer(PM:活性がない,または減弱している者)であり,EM被験者がキニジンとチモロールを併用した場合,チモロールの消失半減期は延長して血中濃度が上昇し,PM被験者がチモロールのみを使用した場合(プラセボ群)の血中濃度に近づくことが示された(図1左)。また,チモロールのβ遮断作用による心拍数の低下割合は,キニジン併用群で有意に高くなることも示され(図1右),経口のCYP2D6阻害薬を併用した場合,チモロールの全身性副作用が増強されることが示唆された。

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