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なぜ,病院は退院を急ぐのか?─医療のサブスクリプションと入院期間の階段構造[研修医・専攻医のためのDPC超入門(1)]

登録日: 2026.08.04 最終更新日: 2026.08.04

高田史門 (医療法人純徳会田中病院院長)

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5 明日からできること─「退院をイメージする」習慣

では,若手医師として,明日からの臨床で何ができるか。

私が勧めたいのは,「入院初日から退院をイメージする」という習慣だ。

具体的には,患者を入院させたその日に,心の中で(できればカルテにも),次の4つの問いに答えてみてほしい(表3)。

この4つを意識するだけで,診療の組み立てが大きく変わる。漫然と「治療しながら様子を見る」のではなく,ゴールから逆算する診療になる。

そして,指導医に対しても,こう聞いてみてほしい。

「この患者さんの退院目標日は,いつ頃を想定されていますか?」

これは,決して出すぎた質問ではない。むしろ,こうしたディスカッションを重ねることで,指導医からの信頼も得やすくなる。退院日を意識した診療は,若手医師の臨床力そのものを底上げするのだ。

冒頭の研修医も,その後,80歳代女性の患者さんを無事に退院に導いた。自宅へ戻った彼女は,外来でもとの生活を取り戻したと聞く。

「指導医の先生の『DPC的に』という一言の中には,こんなにたくさんの意味があったんですね」

研修医のその言葉に,私は微笑んだ。「もう1つ大切な話をしよう。同じ『退院させる』にしても,カルテにどう書くかで,病院の収入も,その後の医療の質も,変わってくる。たとえば君が,退院サマリーに『肺炎』とだけ書いた患者─あれ,本当にそれだけでよかったのかな?」

研修医は,不思議そうな顔をした。その表情こそ,次回のテーマへの最高の入り口だ。

院長のホワイトボード─今日のTake Home Message  

▶ DPCは,病気の種類ごとに1日当たりの入院費が定額で決まる「包括払い」の仕組みである

▶ 入院期間にはⅠ・Ⅱ・Ⅲの3段階の「階段」があり,期間Ⅱを超えると1日当たりの点数が大きく下がる

▶ 入院期間Ⅰから期間Ⅱへの移行で,点数は約3割超減になることもある(例:75歳以上の市中肺炎)

▶ 長期入院は経営面だけでなく,廃用症候群,せん妄,院内感染,転倒など患者本人にとっても害となる

▶ 入院初日から「退院基準」「退院目標日」「療養場所」「今日やるべきこと」を意識する習慣をつける

次回予告
第2回「なぜ,カルテに『肺炎』とだけ書いてはいけないのか?」─同じ肺炎でも,カルテ記載のひと工夫で,病院の収入が大きく変わる。そして,それは医療の質にも直結する。コーディングと診療の意外な関係を,次回お届けします。

【参考資料】

▶ 厚生労働省:令和8年度診療報酬改定について. DPC/PDPS関連告示・通知.
https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_67729.html

▶ 日本呼吸器学会成人肺炎診療ガイドライン2024作成委員会, 編:成人肺炎診療ガイドライン2024. メディカルレビュー社, 2024.
https://www.jrs.or.jp/publication/file/adult_pneumonia_2024v5.pdf


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