OTC類似薬の薬剤費の一部を保険給付外とする「一部保険外療養」の創設などを盛り込んだ健康保険法等改正案は5月29日、参院本会議で賛成多数により可決され、改正法が成立した。賛成したのは自民党、日本維新の会、国民民主党,参政党など。衆院採決では反対したのは共産党のみだったが、参院では共産のほか立憲民主、公明、れいわの各党も反対の立場を明確にし、反対票は投票総数245票中79票と3分の1に達した。

28日の参院厚労委で質問に答える高市首相(参議院インターネット審議中継より)
立憲民主、公明両党は、法案のうち高額療養費制度に関する改正内容と一部保険外療養の制度内容に問題があるとし、5月26日、参院厚生労働委員会に共同で修正案を提出した。
両党は、政府提出の法案は、高額療養費の支給要件などを定める際、長期療養者の家計に与える影響を考慮する規定を設けているものの「不十分」と主張。高額療養費制度の考慮事項への「中低所得者の家計に与える影響」の追加、一部保険外療養への「療養を受ける者の必要かつ適切な受診が抑制されることがないようにする」との要件の追加などを修正案に盛り込んだ。
■高市首相「条文を見直す考えはない」
委員会での法案審議では、一部保険外療養の対象がOTC類似薬などの薬剤に限定されない規定となっていることも焦点となり、厚労省の間隆一郎保険局長は28日の委員会で、将来的に薬剤以外に拡大し得ることを否定しなかったこれまでの答弁を修正し、「規定の趣旨としては薬剤のみを対象としたものと解釈している」との見解を示した。
同日の委員会に出席した高市早苗首相もこの問題に関する白川容子氏(共産)の質問に答え、「議論の経緯、その状況を含めた立法事実、(法文上)『その他の療養』の前段に『代替性が特に高い薬剤を用いた療養』と記載されていること、附則の検討規定を踏まえると、一部保険外療養の規定の趣旨としては薬剤のみを対象としたものと解釈している」と明言した。
白川氏は「一部保険外療養の対象として薬剤以外の療養は含むことができないように条文上明確に規定するべきではないか」と主張。高市首相は「条文を見直す考えはない」と答えた。
■高額療養費見直しで「破滅的医療支出」が生じる懸念
28日の委員会では、質疑終了後、討論を経て採決が行われ、立憲・公明の修正案は反対多数で否決、政府原案は賛成多数で可決された。続いて、6会派(自民、維新、立憲、国民、公明、参政)共同提案による19項目の附帯決議が賛成多数で採択された。
翌29日の参院本会議でも採決前に討論が行われ、立憲民主の郡山りょう氏は「今回の高額療養制度の見直し内容では、WHOが定義する『破滅的医療支出』の状態となる方が生じる可能性が指摘されている」「一部保険外療養の対象となる薬剤の範囲がなし崩し的に広げられる懸念がある」などとして反対を表明。
医師資格を持つ公明の原田大二郎氏も「高額療養費制度の見直し、一部保険外療養の創設について重大な問題点を抱えたままの法案に賛成することはできない」と反対した。
一部保険外療養は2027年3月に施行される予定。厚労省はOTC類似薬「77成分・約1100品目」を対象とし、薬剤費の「4分の1」を保険給付外とするとしている。
■保団連が抗議声明「条文そのものを修正すべき」
改正健保法などの成立を受け、全国保険医団体連合会(保団連)は29日、「政府は(一部保険外療養の適用対象の)法解釈は修正したものの、法文修正そのものは否定している。条文そのものを修正すべき」などと訴える抗議声明を発表した。
参院厚生労働委員会が採択した附帯決議[要旨]
1 医療保険制度の見直しに当たっては、医療全体をどのように維持し国民皆保険制度を堅持していくかとの観点から議論を行う。
2 出産の標準的な費用に係る給付体系の見直しに当たっては、サービス内容と費用の見える化、標準化を確実に実施し、周産期医療提供体制の確保に最大限努める。
3 周産期医療提供体制の整備について、公費による支援を含む必要な対応策を検討する。
4 分娩費、出産時一時金等の金額の設定に当たっては、医療保険財政、保険料負担への影響を十分に考慮するとともに、分娩施設など関係者の意見を十分に踏まえる。
5 麻酔を実施する医師の確保や安全管理体制の標準化など、安全で質の高い無痛分娩や痛みの緩和を目的とした処置の提供体制確保のための方策を講じる。
6 医療機関における業務効率化・勤務環境改善への取り組み推進に向けて適切に支援する。
7 一部保険外療養の施行に当たっては、要指導医薬品・一般用医薬品との代替性の高いものであっても、適正な医療の提供を確保するために必要なものについては将来にわたって保険給付の対象とするとともに、配慮が必要な者への措置は将来にわたって維持する。
8 一部保険外療養の対象範囲については、薬剤以外の診療行為を含めるべきではないという指摘もあったこと等を踏まえ、十分に検討する。
9 一部保険外療養の導入に当たっては、イトプリドの妊婦に対する使用上の注意等を精査・検討すべきとの指摘があったことを踏まえ、イトプリドを妊婦に使用する際に別途の負担を求めない方向で整理する。
10 一部保険外療養の導入に当たっては、対象薬剤や要配慮者の範囲、患者負担割合を有効成分、効能効果、最大用量等を踏まえ精査・検討する。
11 高額療養費等の支給に関する事項は「療養等に必要な費用の負担が家計に与える影響」「必要かつ適切な受診に与える影響」を考慮して定めることとし、長期療養者をはじめ療養等に必要な費用の負担が家計の負担能力に応じたものとなるよう配慮する。
12 高額療養費制度の支給要件等の見直しに当たっては、多数回該当や年間上限に該当しない患者であっても必要な医療へのアクセスが阻害されないように留意する。
13 高額療養費制度において、保険者変更に関わる多数回該当の初期化、合算可能レセプトに係る金額要件や歴月単位判定、償還払いによる一時的負担など制度運用の改善に向けて継続的に検討を進める。
14 高額療養費制度の将来の見直しに際しては、財政・経済全体の中における高額療養費制度の在り方という視点も踏まえた議論を進める。
15 治療の継続、生活の維持、子の養育等に大きく影響が出る事態に直面した患者・家族を支援する観点から、相談支援窓口の整備、アクセスの確保等に取り組む。
16 後期高齢者医療制度における金融所得の勘案に当たっては、制度導入後の後期高齢者の受診などへの影響について実態を把握・検証し、必要な見直しを行う。
17 全国健康保険協会への国庫補助の在り方については、財政運営の実態等も勘案しつつ検討する。
18 子育て世帯の保険料負担のさらなる軽減について検討を進める。
19 近年の急激な社会・経済状況の変化に応じた、あるべき社会保障の理念とグランドデザインに基づく、社会保障と税が一体となった改革の実現に向けて検討を進める。
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