OTC類似薬の薬剤費の一部を保険給付外とする「一部保険外療養」制度の創設などを盛り込んだ健康保険法等改正案は4月28日、衆院本会議で賛成多数により可決され、参院に送付された。与党のほか、共産党を除く野党が賛成した。
健保法等改正案は、一部保険外療養の創設のほか、「後期高齢者医療の保険料や窓口負担割合の判定への金融所得の反映」「出産の標準的な費用に自己負担がかからないようにするための給付体系の見直し」「高額療養費の年間上限の創設」などが柱。
一部保険外療養について厚労省は、2027年3月の施行時は、OTC類似薬「77成分・約1100品目」を対象とし、薬剤費の「4分の1」を保険給付外とするとしているが、衆院厚生労働委員会の審議では、法案はOTC類似薬以外も対象に追加できる規定となっており、保険給付外として患者に追加負担を求める費用の割合を全額(10割)とすることも可能であることが浮き彫りにされた。
上野賢一郎厚労相は4月24日の厚生労働委員会で、辰巳孝太郎氏(共産)の質問に対し「現時点では一部保険外療養としてOTC類似薬以外を追加することは想定していない」と答弁。
患者の負担割合については「全額を別途の負担として設定することも可能かと言われれば可能」と、法制上は10割負担も可能であることを認めつつ、「患者の状況や負担能力に配慮する必要があるので、現時点で別途の負担を薬剤の全額とすることは考えていない」と述べた。
■患者負担への配慮など17項目の附帯決議採択
24日の厚生労働委員会では質疑終了後、法案の採決が行われ、共産党を除く与野党の賛成で可決。続いて、6会派(自民、維新、中道、国民、参政、みらい)共同提案による17項目の附帯決議を採択し、一部保険外療養について要配慮者への措置は将来にわたって維持することや、患者に過度な負担を生じさせることのないよう十分配慮することなどを政府に求めた。
共産党の辰巳氏は採決前の討論で、「OTC類似薬の保険外しにとどまらない無限定な規定になっている」「全額保険外給付とすることもできる規定になっている」などと一部保険外療養の問題点を指摘。「国民皆保険制度を破壊する」として法案に反対した。
28日の衆院本会議で法案に賛成の立場から討論を行った中道改革連合の浜地雅一氏は、OTC類似薬の薬剤費の4分の1を保険給付外とする制度の趣旨は理解するとしながら、見直しの際には「安易な拡大を行わない」よう求めた。
■保団連が声明、参院での徹底審議求める
健保法等改正案の衆院通過を受け、全国保険医団体連合会(保団連)は28日、参院で徹底審議の上、廃案にするよう求める声明を発表。上野厚労相の答弁を踏まえ、「一部保険外療養の創設は、薬剤費を公的保険から外していくもので、我が国の公的医療保険制度の根幹に関わる大問題」と、あらためて強い懸念を示した。
衆院厚生労働委員会が採択した附帯決議[要旨]
1 出産の標準的な費用に係る給付体系の見直しに当たり、サービス内容と費用の見える化、標準化を確実に実施。安全・安心な出産ができる環境整備に向け、周産期医療提供体制の確保に最大限努める。
2 周産期医療提供体制の整備について公費による支援を含む必要な対応策を検討する。
3 分娩費、出産時一時金等の金額の設定に当たっては、分娩施設など関係者の意見を十分に踏まえる。
4 麻酔を実施する医師の確保や安全管理体制の標準化など、安全で質の高い無痛分娩や痛みの緩和を目的とした処置の提供体制確保のための方策を講じる。
5 多胎妊娠の医学的特性に応じた標準的な健診内容のあり方を検討するとともに、多胎妊婦健康診査支援事業の全国的な実施率向上に向けた具体的な方策や国の関与のあり方を含め検討する。
6 医療機関における業務効率化・勤務環境改善への取り組み推進に向けて適切に支援する。
7 一部保険外療養の施行に当たっては、薬剤の支給において、要指導医薬品・一般用医薬品との代替性の高いものであっても、配慮が必要な者への措置は将来にわたって維持する。また患者に過度な負担を生じさせることのないよう十分配慮する。制度導入後の影響の実態を把握・検証し、適時ホームページ等で広く公表しつつ可逆的な見直しを含む必要に応じた見直しを行う。
8 一部保険外療養の対象範囲については、薬剤以外の診療行為を含めるべきではないという指摘もあったこと等を踏まえ、十分に検討する。
9 一部保険外療養に係る対象薬剤や要配慮者の範囲、患者負担割合の検討に当たっては、患者・国民、関係者に対して丁寧な説明を行い、その意見を十分に踏まえる。
10 高額療養費等の支給に関する事項は、費用の負担が家計に与える影響、受診に与える影響を考慮して定める。高額療養費等の支給を受ける者の収入の状況等に応じ、きめ細かく、できる限り利便性に配慮した支給要件とする。
11 高額療養費制度の支給要件等の見直しに当たっては、多数回該当や年間上限に該当しない患者であっても必要な医療へのアクセスが阻害されないように留意する。制度の見直しによって、国民の健康状態の悪化や医療費の増大につながることのないよう、所得区分別、年齢別、疾病別など詳細な影響を継続的に検証し、必要に応じて速やかに見直しを行う。
12 保険者変更に関わる多数回該当の初期化、合算可能レセプトに係る金額要件や歴月単位判定、償還払いによる一時的負担など高額療養費制度の運用改善に向けて継続的に検討を進める。
13 後期高齢者医療制度における金融所得の勘案に当たっては、後期高齢者の受診などへの影響について実態を把握・検証し、必要な見直しを行う。
14 金融所得の公平な反映を目指す後期高齢者医療制度や国民健康保険の事務の実施について、自治体の事務負担の軽減に努める。
15 全国健康保険協会への国庫補助の在り方については、財政運営の実態等も勘案しつつ検討する。
16 子育て世帯の保険料負担のさらなる軽減について検討を進める。
17 国民健康保険制度の財政安定化基金の運用について必要な見直しを行う。
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