■制御性T細胞の臨床応用「可能性は大きいが、まだ分からない」
──制御性T細胞は医療への応用の可能性もはっきりしてきた。
仲野 ノーベル賞の授賞理由としてはそこが大きいと思います。ただ、まだ完全にそれができるかというと、そこまでいってないような気はします。これからというところでしょう。可能性としては非常に大きいと思いますが、実際にどうなるかはもう何年か経ってみないと分からないと思います。
──記者会見で坂口先生も、20年くらいのうちにはがん免疫療法への応用が確立するという見通しを示していました。
仲野 免疫というのはがんに比べて非常に複雑なシステムですから、あちらを叩けばこちらが、というようなことがどんどん出てくる可能性がある。それを克服できるかは今後の展開次第ではないかと思います。
■基礎研究の支援が難しい時代
──記者会見で坂口先生は基礎研究に対する支援の強化も訴えていましたが、政府の支援のあり方についてはどう考えますか。
仲野 これは非常に難しい問題です。今の時代、そんなにシーズが残っているか、未知の現象やテクノロジーが見つかるかという問題に帰着しますが、うまくいくかどうか分からない基礎研究にそんなにお金が出せるかどうか。ベンチャーみたいな気持ちでハイリスク・ハイリターンで臨んでも巨万の冨を得られるわけでもない。日本だけでなく世界的にも難しくなってきていると思います。
2015年に亡くなった早石修先生(京大名誉教授)の「握り飯より柿の種、柿の種を大事にしなさい」という話がありますが、柿の種の場合は年数もかかるし、下手したら生えてこないかもしれないし、枯れる可能性もある。研究が高度化・高額化・高速化する中で、坂口先生のように細々と続けた研究が大きく花開くようなことが今後あるのかどうか。
生命科学もデータサイエンス化してきています。シーズが残っている可能性はもちろん否定しませんが、かなり煮詰まっている状況であることも勘案して支援を考えないといけなくなっていると思います。
■竹市氏、森氏らも「受賞の可能性十分ある」
──基礎研究に対する政府の支援が厳しくなる中で、ノーベル生理学・医学賞の日本人の受賞は今後も続くでしょうか。
仲野 生理学・医学賞を受賞する可能性があるとよくいわれているのは、竹市雅俊先生と森和俊先生。このお2人は可能性は十分ある。受賞しても全然不思議はないと思います。