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腎疾患合併妊娠

登録日:
2017-03-16
最終更新日:
2017-07-25
田中 守 (慶應義塾大学医学部産婦人科学教室教授)
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  • ■疾患メモ

    妊娠は,母体の腎臓に対して母体と胎児の2人分の負荷をかけるため,妊娠が腎疾患自体に与える影響および腎疾患が妊娠経過に与える影響の双方を考慮する必要がある。

    一般に,腎機能低下により,妊娠率低下,妊娠予後不良,母体腎機能も悪化する傾向があるので,母体および胎児に対する慎重な対応が必要である。

    ■代表的症状・検査所見

    【症状】

    〈妊娠が腎不全に与える影響〉

    血清クレアチニンの値が1.5mg/dL未満の軽度腎機能低下の患者においては,妊娠中の一時的な腎機能低下を認めることがあるが,問題となることは少ない。

    〈腎不全が妊娠に与える影響〉

    腎不全の患者では,妊娠高血圧,妊娠高血圧症候群,子癇発作,母体死亡を生じる確率が上昇することが知られ,母体死亡率は4倍になると報告されている1)

    妊娠高血圧症候群の症状は,高血圧,蛋白尿であり,腎不全患者においては診断が紛らわしい場合もあるので,血小板数や肝機能の変化とともに注意深い観察が必要である。

    【検査所見】

    〈妊娠が腎不全に与える影響〉

    血清クレアチニンの値が1.5mg/dL以上や高血圧を合併した患者では,妊娠中に多様な経過をとり,出産後に腎機能悪化,透析を必要とするような腎障害へ進展する可能性があり,注意を要する。

    〈腎不全が妊娠に与える影響〉

    腎不全の患者では,母体症状の悪化に伴う早産率の上昇とともに胎児発育不全や胎児死亡をきたすことがあるので,胎児状態についても注意深い観察が必要である。

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