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性器の形態異常

登録日:
2017-03-16
最終更新日:
2017-04-20
百枝幹雄 (聖路加国際病院女性総合診療部部長)
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  • ■疾患メモ

    性器の形態異常は原因別に,①性染色体構成の異常,②性染色体構成に異常がない性腺の分化異常,③性染色体構成・性腺分化に異常がない性器の分化異常に分けられる。

    それぞれの異常は,外陰,腟,子宮,性腺に多様な形態異常をきたす。

    ■代表的症状・検査所見

    【症状】

    〈性染色体構成の異常〉

    ①クラインフェルター症候群

    性染色体構成はXXY,XXXYなど,Xが2個以上およびYが1個以上である。

    性腺は精巣であるが発育不全で,造精機能とテストステロン産生機能が低下している。

    外性器は男性型であるが,精巣機能不全により陰茎の発育は不良で,第2次性徴が遅延する。

    ②ターナー症候群

    性染色体構成はXOあるいはXO/XXのモザイクである。

    性腺は卵巣へ分化するが,早期に索状性腺となる。

    性器は女性型であるがエストロゲン低値のため発育不良であり,多くの場合,原発性無月経である。

    ③混合型性腺形成不全症

    性染色体構成は,ほとんどがXO/XYのモザイクである。

    性腺は一側が低形成の精巣であり,他側が索状性腺である。

    性器は男女中間型で,男性型で尿道下裂を認めるものから,ほぼ女性型で陰核肥大を認めるものまで様々な程度がある。

    〈性腺の分化異常〉

    ①真性半陰陽

    染色体は46XXが多いが,時に46XX/46XY,46XX/47XXYのモザイクもある。

    性腺として一側が精巣で他側が卵巣,あるいは一側に卵精巣を有する。

    内性器は女性型で特に卵巣側には子宮,卵管を認めるが,外性器はほぼ男性型に近いものから女性型に近いものまで,様々な程度に男女中間型を示す。

    ②XX男性症候群

    染色体は46XXにもかかわらず,性腺が精巣である。

    性器も男性型であるが,精細管障害を認め,性器発育も不十分である。

    ③46XY型性腺形成不全症(スワイヤー症候群)

    染色体は46XXであるが,性腺は索状である。

    アンドロゲンが作用しないため性器は女性型であるが,性器発育は不良である。

    ④無性腺症

    染色体は46XYであるが,性腺が存在しない。

    性器も痕跡的な陰茎と陰囊癒合不全を認めるのみである。

    〈性染色体,性腺に異常のない性器の分化異常〉

    ①男性半陰陽

    染色体は46XYであり,性腺も正常に精巣に分化するが,以下4つの原因により性器が男女中間型あるいは女性型を呈する。

    ・テストステロン生合成障害:テストステロン合成酵素欠損に起因する。

    ・アンドロゲン不応症(AIS,精巣性女性化症):テストステロン分泌は正常にもかかわらず,その受容体の異常により,外性器が女性型に分化する。しかし,ミュラー管抑制因子(MIS)は正常に作用するためミュラー管は消失し,子宮・卵管は欠如し,腟は盲端に終わる。

    ・5α-リダクターゼ欠損:テストステロン分泌は正常であるが,細胞内でテストステロンをジヒドロテストステロンに変換できないので,性器の男性型への分化が阻害される。

    ・ミュラー管退縮不全:性腺,外性器が正常男性型であるにもかかわらず,子宮や卵管も存在する。

    ②女性半陰陽

    染色体は46XXであり,性腺も正常に卵巣に分化するが,以下の原因により性器が男女中間型あるいは男性型を呈する。

    副腎性器症候群:コルチゾール合成酵素欠損によるコルチゾール低下,ACTH増加を介して副腎におけるアンドロゲンの合成が亢進し,性器の男性型への分化を誘導する。

    非副腎性女性半陰陽:妊娠中の母体アンドロゲン産生腫瘍,あるいは妊娠中に投与されたアンドロゲン作用を持つ製剤により性器の男性型への分化を引き起こす。

    ③子宮・腟の奇形

    American Fertility Society(AFS)によるミュラー管奇形の分類を示す(1)



    Ⅰ型(低形成・欠損)およびⅡ型(単角子宮)で機能性子宮を有する場合に月経血排出経路の閉塞があれば,子宮留血症をきたし,初経後に問題となる。

    Ⅲ型(重複子宮)には,重複腟・片側腟閉鎖を合併して腟留血症をきたすことが稀ではない。

    Ⅱ型(単角子宮),Ⅲ型(重複子宮),Ⅳ型(双角子宮),Ⅴ型(中隔子宮)では流早産をきたしやすく,不育症の原因となる。

    I型に分類される腟欠損の中で機能性子宮を有さない全腟欠損(Rokitansky-Küster-Hauser症候群)は腟欠損の70%を占め,婦人科性器奇形の中でも高頻度にみられる。機能性子宮がないので留血腫などはみられないが,生殖年齢においては性交障害をきたすため問題となることが多い。

    【検査所見】

    性器に形態異常を認めた場合,視診,超音波検査,染色体検査,ホルモン検査,子宮卵管造影,MRI検査,腹腔鏡検査などにより,以上の疾患を鑑別診断する2)

    染色体あるいは遺伝子の異常に起因する性分化異常,特に性腺の低形成や欠損に対しては根本的な治療法はないが,審美的目的や性生活を可能にするための性器形成手術を行うことがある。

    性腺機能不全では,骨粗鬆症の進行などの予防を目的にホルモン補充療法が必要である。

    AISやXY型性腺形成不全症などでは,性腺腫瘍発生予防を目的に性腺摘出術が必要である。

    子宮奇形は多様であり,妊孕性に対する影響も様々である。中隔子宮では不妊症との関連が強く,手術療法による妊孕性の向上が期待できる。

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